食の医学館 の解説
がんをふせぐためのじゅうにかじょう【がんを防ぐための12か条】
しかし、少しでもその要因を取り除こうということを目標として、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)の監修によってつくられたのが“がんを防ぐための12か条”です。この12か条を積極的に実行することで、約60%はがんの発生を防ぐことができるともいわれています。ふつうに日常生活を送りながら簡単にできることです。自分の日常生活習慣を見直し、少しだけ気をつかいながら、がんを防ぎ、健康で明るい生活を送りましょう。
《1.バランスのとれた栄養をとる》
〈いろどり豊かな食卓にして〉
食べものは体の組織をつくり、維持するために欠かせませんが、それだけに食べものが体に与える影響も大きいもの。近年、コンビニエンスストアのお弁当、レトルト食品やインスタント食品など、便利なものが簡単に手に入るようになりました。しかし、食品添加物や塩分、野菜の摂取量などを考えると、栄養的にアンバランスなものが多く、これらががん発生の1つの要因にもなっています。できるだけ多くの種類の食品から、必要な栄養素をしっかりとりましょう。
《2.毎日、変化のある食生活を》
〈ワンパターンではありませんか?〉
ニンジンが嫌い、ピーマンが嫌いなどと、人間には少なからず食べものの好き嫌いがあります。そして、嫌いなものは体に必要な栄養素をたっぷり含んでいても食べなくなり、好きなものだけを食べていると、栄養面でのかたよりが生じます。必要な栄養素を多くの種類の食品から摂取することはとてもたいせつです。ワンパターンな食事を避けるために、好き嫌いを克服し、また多くの種類の食品を食べられるようなくふうをして調理することがたいせつです。
《3.食べすぎを避け、脂肪はひかえめに》
〈おいしいものも適量に〉
昔から“腹八分目”といいますが、適量の食事は長生きにつながり、またがんの発生を予防することにもなるということがわかっています。食物繊維や水溶性ビタミンなどを豊富に含む野菜類などは過剰に摂取しても、とくに問題ありませんが、脂肪の過剰な摂取は乳がんや大腸がんなどの発生を促進してしまいます。近年、食生活の欧米化により、脂肪分、とくに動物性脂肪の摂取量がふえています。動物性脂肪は適量を意識するように心がけましょう。
《4.お酒はほどほどに》
〈健康的に飲みましょう〉
“酒は百薬の長”とはいいますが、飲みすぎると肝臓に悪影響をおよぼすだけでなく、口腔内の腫瘍や喉頭がん、食道がんなどを促進し、またアルコール類を中心にした食事内容によって栄養のアンバランスが生じ、ほかの部位でがんを発生させてしまうなどの悪循環を引き起こしてしまいます。1日のアルコール摂取量は、ビールなら大ビン1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯、ウイスキー類ならダブル1杯に抑え、楽しみながら、健康を維持したいものです。
《5.タバコは吸わないようにしましょう》
〈とくに、新しく吸いはじめない〉
がんを死亡原因でみると、喫煙者の死亡率は非喫煙者の1.65倍。全死因をみても1.29倍と高い死亡率を占めています。明らかに喫煙ががんに影響していることがわかり、死亡率だけでなく、がん発生にも大きな影響を与えています。喫煙は自分の健康をそこなうだけでなく、周囲の人の健康にも害を与えます。一度習慣化されるとなかなかやめることができません。禁煙できない人は少なくとも1日の本数を減らしていくように、心がけましょう。
《6.食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる》
〈緑黄色野菜をたっぷり〉
ビタミンは人間の代謝機能を円滑にする働きがありますが、さらにがんの発生を防ぐともいわれています。また老廃物をいつまでも体内に蓄えておくとがん発生の原因になりますが、食物繊維はそのような腸内にたまった老廃物を排出するためにとても有効です。ビタミンA、C、E、食物繊維をたっぷり摂取するには、野菜類、とくに緑黄色野菜が有効です。肉や魚などの動物性たんぱく質を中心にせず、野菜中心のメニューを心がけ、たっぷりと摂取するようにしましょう。
《7.塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから》
〈胃や食道をいたわって〉
塩分の過剰摂取は胃がんや食道がんの発生と密接な関係があります。また熱い茶がゆを食べる地方では食道がんが多く発生するという報告もあり、熱いものはがんが発生しやすい環境をつくるといわれています。塩分はがんだけでなく、さまざまな生活習慣病の原因ともなります。男性は1日9.0g未満、女性は7.5g未満の塩分摂取を目ざし、熱いものはなるべくさましてから食べるように心がけましょう。
《8.焦げた部分は避ける》
〈突然変異を引き起こします〉
加熱によって炭化した食材部分では、細菌などに突然変異を引き起こす物質が生じ、また数種類の発がん物質が発生してしまうことがわかっています。多少の焦げならそれほど気にすることはありませんが、もったいないからといって焦げた部分を食べたり、おこげご飯や中華料理などにあるおこげ料理を頻繁に食べるのは好ましくありません。
《9.カビの生えたものに注意》
〈食べる前にチェックして〉
通常、カビの生えたものを食べる人はいませんが、ピーナッツなどのように表面に粉が吹いているようなナッツ類などやトウモロコシなどに生えるカビはなかなか見分けにくく、知らず知らずに食べてしまいます。ところが、これらのナッツ類やトウモロコシのカビには強い発がん性があるといわれています。食べる前にチェックすると同時に、食品の保管には十分気をつけましょう。ただし、ブルーチーズなどのように、意図的にカビを発生させた食品は問題ありません。
《10.日光に当たりすぎない》
〈太陽はいたずら者です〉
日本人はメラニン色素が多いため、紫外線に強く、皮膚がんや悪性黒色腫の発生が少ない人種です。しかし、紫外線でやけた肌は一種のやけどの状態にあり、けっして肌によい影響を与えるばかりではありません。炎症の状態が続くと、遺伝子が傷つき、がんが発生する確率が高くなってしまいます。もちろん、適度に日光に当たることは必要ですが、過剰に紫外線を浴びることは有害です。日光浴はほどほどにし、肌をいたわることがたいせつです。
《11.適度にスポーツをする》
〈いい汗、流しましょう〉
“栄養”、“運動”、“休養”は、厚生労働省が提唱する健康の指針でもあげられているように、健康を維持するための3大要素です。そして、健康な体を維持することががん発生の予防にもつながります。定期的に適度な運動をして、体の生理機能を活発にすることがたいせつです。また、ストレスもがん発生の要因の1つです。運動によって気分をリフレッシュしながらストレスを解消することも必要です。
《12.体を清潔に》
〈さわやかな気分で〉
不潔になりやすい部分を、清潔に保たないと、皮膚がんや陰茎がん、子宮頸がんの発生を促進してしまうことがあります。かつてイギリスでは、多くの煙突掃除の作業員に陰嚢の皮膚がんが発生したことがありました。ところが体を洗って清潔にするようになってから、その傾向も減少したといいます。入浴やシャワーで皮膚についた汚れを落とし、清潔を心がけましょう。