日本大百科全書(ニッポニカ)「郵便為替」の解説
郵便為替
ゆうびんかわせ
簡単で確実に送金できる手段を提供する郵政事業。郵便為替制度は、フランスにおいて1817年に初めて創設された。日本では、1875年(明治8)1月2日から、110局で内国郵便為替の取扱いが開始されたが、これは郵便貯金の創業に先だつこと5か月であった。1872年に郵便が全国実施され、その制度が確立されたことを基盤として登場したものである。経済活動が地理的に拡大し、遠距離間の送金も必要になってきたため、それを安全確実に行い、経済活動を円滑に行う目的で設けられたが、やがて商取引ばかりでなく、学資の送金なども含め、幅広く利用されるようになった。郵便為替の送金は、現金にかえて為替証書の送達によって行われる。日本の経済活動が発展し、また海外での居住が始まるようになるとともに、海外への送金も必要となり、内国郵便為替と並び、国際郵便為替の取扱いも行われている。
内国郵便為替は、普通為替、電信為替、定額小為替の3種に大別される。
(1)普通為替 普通為替は、郵便局で送金額に見合う普通為替証書を作成し、その証書を受取人に郵送し、受取人がその証書と引き替えに現金を受け取るものである。
(2)電信為替 電信為替は、緊急の送金に際し、郵便局相互の通知を電信(オンライン)によって行い、受取人に電信為替証書を送達する証書払いと、受取人に現金を届ける居宅払い、受取人の来局を待って為替金を交付する窓口払いがある。
(3)定額小為替 普通為替とほぼ同じ取扱いであるが、あらかじめ為替金額が印刷されている為替証書によって送金を行うものである。窓口で口頭で請求し、送金する金額と料金を支払い、定額小為替証書を受け取る。この証書を郵送すると、受取人は郵便局でその証書と引き替えに現金を受け取ることができる。定額小為替証書は、100円、200円、300円、400円、500円、600円、700円、800円、900円、1000円、2000円、3000円、4000円、5000円、8000円、1万円の16種があり、送金する金額に応じ、2枚以上の組合せでも送金できる。
郵便為替の送金の特徴は、現金受渡の証明書類である郵便為替証書によって行われることである。その証書には、普通為替証書、電信為替証書、定額小為替証書の3種類がある。送金の金額制限はないが、普通為替証書、電子為替証書1枚の金額は100万円以下となっている。ただし、オンラインによって処理する場合は、500万円以下である。定額小為替は小額の送金に利用するもので、前記のとおり最高1万円で、16種の券を組み合せて利用し、料金も低廉である。これらの証書の有効期限は、証書発行の日から6か月である。
1981年(昭和56)には、オンラインの発展に伴い、電信為替のスピード化が図られると同時に、窓口払いの取扱いが開設され、87年6月15日からは電信為替と電子郵便(レタックス)を組み合せたマネーレタックスの取扱いも開始されている。
[小林正義]