改訂新版 世界大百科事典 「キュロン」の意味・わかりやすい解説
キュロン
Kylōn
アテナイの貴族。生没年不詳。前640年オリュンピア競技で2種目に優勝。隣国メガラの僭主テアゲネスの娘をめとり,岳父や仲間に支援されてアテナイのアクロポリスを占領し,僭主政治を樹立しようとした(前632または前628)。しかし民衆は彼に従わず,アルコンのメガクレスなどに指揮されてアクロポリスを包囲した。キュロンは脱出したが,少数の仲間は祭壇にすがりついて嘆願したにもかかわらず,引き離されて処刑された。ここから瀆神罪の汚れが責任者メガクレスの一族(アルクメオニダイ)に付着することになった。この一族は前5世紀まで重要な役割を演ずるので,この流血事件も記憶され,アテナイ史上最古の孤立した政治的事件となっている。その前後の歴史はなお暗闇である。
執筆者:藤縄 謙三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報