日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンディー」の意味・わかりやすい解説
キンディー
きんでぃー
al-Kindī
(796ころ―866)
アラブ系の哲学者。バスラ(あるいはクーファ)に生まれる。南アラビアのキンダ人の出身のためにキンディーとよばれ、イスラム哲学史上数少ない純粋のアラブ人であるため「アラブの哲学者」と敬称される。アッバース朝カリフ、アル・マームーンとアル・ムータシムal-Mu'tasim(在位833~842)の庇護(ひご)を得て、ヘレニズム思想の文献のアラビア語翻訳に大きな貢献をした。思想家としては新プラトン主義とアリストテレス哲学の折衷的世界観を有し、のちのイスラム逍遙(しょうよう)派哲学の鼻祖となった。他方、宗教と哲学の調和のために努力した。博学でその著作分野は多岐にわたり、そのいくつかは中世ヨーロッパでラテン語訳された。
[松本耿郎 2016年10月19日]