キンミズヒキ(英語表記)Agrimonia pilosa Ledeb.

改訂新版 世界大百科事典 「キンミズヒキ」の意味・わかりやすい解説

キンミズヒキ
Agrimonia pilosa Ledeb.

平地にも山地にも,日当りのよいところに,普通にみられるバラ科多年草。高さ50~150cm,茎にも葉にも毛が多い。葉は互生して,羽状複葉小葉は大小不揃いで,数対あり,長楕円形,ふちの鋸歯も不揃いである。夏から秋にかけて,総状花序黄色の花をつける。花弁は5枚で小さく,卵形から楕円形,おしべは12本。秋に熟する果実をつつむ萼には,鉤(かぎ)状の毛があって,これが衣服などに付着する。キンミズヒキは,タデ科のミズヒキに似て花が黄色なため,金水引の意味でつけられた和名である。本州,四国,九州から台湾まで分布し,中国大陸にもみられる。変種のヒメキンミズヒキは丈も低く,果実も小さい。全草を干したものは漢方では仙鶴(せんかく)草,竜牙(りゆうが)草という。アグリモニンagrimonine,フラボノイドタンニンなどを含む。収れん止血作用があり,あらゆる出血に効果があり,単独であるいは他の生薬と配合して用いられる。また乳腺炎,毒蛇の咬傷(こうしよう),トリコモナス腟炎に粉末あるいは青汁を外用し,効果がある。また若い植物は食べられることもある。よく似たヨーロッパ産のA.eupatria L.(英名agrimony)も同様に薬用とされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンミズヒキ」の意味・わかりやすい解説

キンミズヒキ
きんみずひき / 金水引
[学] Agrimonia pilosa Ledeb. var. japonica (Miq.) Nakai

バラ科(APG分類:バラ科)の多年草。高さ0.5~1.5メートル。全体に毛があり、根茎は太い。葉は羽状複葉、小葉は大小からなる。頂小葉は菱(ひし)状長楕円(ちょうだえん)形で先はとがる。7~9月、茎の先に総状花序をつけ、径5~10ミリメートルの黄色の5弁花を花序の下から上に次々に開く。果実は痩果(そうか)で萼筒(がくとう)に包まれ、萼筒は果実時に約3ミリメートルの鉤(かぎ)状の刺(とげ)があり、これにより果実の散布を行う。名は、植物体がミズヒキに似ており、花が黄金色であることによる。日本全土の山野、道端に普通に生え、千島、樺太(からふと)(サハリン)、朝鮮半島、中国にも分布。全草を下痢止めなどに用いる。花弁は小さく葉は3~5小葉からなる近縁種のヒメキンミズヒキは、やや日陰に生える。キンミズヒキ属は世界に約15種あり、果実にある刺が特徴。

[鳴橋直弘 2019年12月13日]


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百科事典マイペディア 「キンミズヒキ」の意味・わかりやすい解説

キンミズヒキ

北海道〜九州,東アジアの山野の草地ややぶに多いバラ科の多年草で,全体に粗毛がある。茎は高さ30〜80cm,葉は羽状複葉で小葉は5〜9枚。夏〜秋,長さ10〜20cmの長い花穂を立て,径6〜8mmの黄色の5弁花をつける。柔らかいとげのある萼片は後にやや大きくなり,果実は動物について運ばれる。名はタデ科のミズヒキに似て,花が黄色のため。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キンミズヒキ」の意味・わかりやすい解説

キンミズヒキ(金水引)
キンミズヒキ
Agrimonia eupatoria var. pilosa

バラ科の多年草で,原野に生える。ヒマラヤから東アジアの暖帯,温帯に広く分布する。全草に毛を生じ,羽状葉が互生する。茎の先端が数本に枝分れして,各枝に多数の黄色の小花を穂状につける。萼片も花弁も5枚で,12本のおしべがある。果実は残存する萼の内側にでき,その萼には多数の鉤状の毛があり,人や動物に付着して運ばれる。花序がタデ科のミズヒキに似ており,花が黄色いのでこの名がある。

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世界大百科事典(旧版)内のキンミズヒキの言及

【薬用植物】より

…それとともに民間でも癌に対して薬効があると信じられている植物が使用されている。たとえばキンミズヒキ(中国名,竜牙草,仙鶴草,バラ科)は中国で収斂(しゆうれん)止血剤として,胃潰瘍に用いられているが,日本へは胃癌に効果があると伝えられて,キンミズヒキさがしが行われたり,栽培もされているという。また,乾燥したサルノコシカケ類を抗癌薬として旅行者が海外で購入し,空港で没収される例がある。…

※「キンミズヒキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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