ギャスケル(読み)ぎゃすける(英語表記)Elizabeth Cleghorn Gaskell

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギャスケル」の意味・わかりやすい解説

ギャスケル
ぎゃすける
Elizabeth Cleghorn Gaskell
(1810―1865)

イギリスの女流小説家。ユニテリアン派の牧師を父としてロンドンに生まれる。幼くして母を失い、田舎(いなか)の小さな町ナッツフォードに住む伯母に養われて、平和な少女時代を過ごした。1832年に父と同じ派の牧師と結婚、任地マンチェスターに住み、長編『メアリー・バートン』(1848)を書いて一躍作家として名をあげた。その後故郷ナッツフォードをモデルに善意ユーモアを盛り込んだ中編『クランフォード』(1853/邦訳名『女だけの町』)、『シャーロット・ブロンテ伝』(1857)などの代表作を書いたが、65年『妻と娘』完成間近で急逝した。19世紀の社会問題や世相を、いかにも牧師の娘、妻らしく人間と宗教への信頼を失うことなく描いている。

小池 滋]

『小池滋訳『世界文学全集14 女だけの町』(1967・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギャスケル」の意味・わかりやすい解説

ギャスケル
Gaskell, Elizabeth Cleghorn

[生]1810.9.29. ロンドン
[没]1865.11.12. ハンプシャー,オールトン
イギリスの女流作家。息子をチフスで失った悲しみをまぎらすため,小説を書きはじめた。処女作『メアリー・バートン』 Mary Barton (1848) や『北と南』 North and South (54~55) は,労働者の悲惨な生活についてのつぶさな見聞を生かして,工業都市における労資衝突を扱っている。これらの小説の傾向とは別の一面は,小さな田舎町の女性の生活を描いた『クランフォード』 Cranford (53) や,些細な家庭内の問題を扱った『妻たち娘たち』 Wives and Daughters (64~66) などの静かな物語にみられる。『シャーロット・ブロンテ伝』 Life of Charlotte Brontë (57) も,伝記文学の名作とされている。

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