ギルブレス(読み)ぎるぶれす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギルブレス」の意味・わかりやすい解説

ギルブレス(夫妻)
ぎるぶれす

フランクFrank Bunker Gilbreth(1868―1924)、妻リリアンLillian Moller Gilbreth(1878―1972)はともにアメリカの科学的管理法研究者。フランクは煉瓦(れんが)積み職人として働くうち、その煉瓦積み作業の動作の合理化を研究し、それを基礎に科学的管理法の創始者テーラーの作業時間研究を発展させ、夫妻協力して作業動作研究を創案した。彼らの動作研究は、あらゆる動作の基礎単位となるサーブリグtherblig(Gilbrethの逆つづり)を用い、写真や映画を駆使する画期的なものであった。フランクは1911年からコンサルティングエンジニアとして活躍していたが、第1回国際経営会議(CIOS)に出席直前急死し、夫人代役を務めた。夫妻には共著『疲労研究』(1916)や『動作研究』(1917)などがある。「1ダースなら安くなる」を実践して12人の子供をもうけるなど、逸話の多い夫妻でもあった。

[森本三男]

『H・F・メリル編、上野一郎監訳『経営思想変遷史』(1968・産業能率短期大学出版部)』『L. F. Urwick and W. B. Wolf eds.The Golden Book of Management(1984, AMACOM, New York, U.S.A)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ギルブレス」の意味・わかりやすい解説

ギルブレス
Frank Bunker Gilbreth
生没年:1868-1924

アメリカの技術者。メーン州フェアフィールドに生まれた。建築同業者連の徒弟となる。その後,建設技術者として成功する一方,動作研究motion studyと呼ばれる方法を創案した。これは無用な動きを省くことによって作業時間を短縮しようとするもので,F.W.テーラーの時間研究time studyとならんで,科学的管理法の基礎を築いた。彼は,より精密な時間研究を行うために映画カメラを導入し,それによって微細動作研究micromotion studyを発展させた。高速度カメラを用いて,1分の1/2000を単位に作業動作を分析した。その結果,彼は〈さがす〉〈見いだす〉〈選ぶ〉などの18の基本動作を抽象し,それらにギルブレスのつづりの逆であるサーブリッグtherbligという名称と,独特の記号表記を与えた。種々の作業動作をこれらの要素に分解して,最良の作業方法を定めようとした。1920年,メーン大学から学位をうけた。妻のリリアンLillian Evelyn Moller Gilbreth(1878-1972。Mollerは旧姓)は心理学者として夫の仕事に協力し,二人の共著も多数ある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギルブレス」の意味・わかりやすい解説

ギルブレス
Gilbreth, Frank Bunker

[生]1868.7.7. メーン,フェアフィールド
[没]1924.6.14. ニュージャージー,モントクレア
アメリカの技師マネジメントコンサルタント。 F. W.テーラーに代表される科学的管理法のうち動作研究の開発者。ボストン初等中学卒業。マサチューセッツ工科大学に入学を許可されたが,みずから実務の道を選び,煉瓦工,現場監督を経て建築業者として独立した。この間煉瓦積み作業の動作研究を始め,テーラーのストップウォッチによる作業研究 (動作および時間研究) をさらに深めた「微細動作研究」,18の基本動作に要素化したサーブリッグを発案し,作業管理を科学的に行う基礎をつくった。 1912年以降は研究に専念。心理学者である妻リリアン・モーラーも夫に協力,作業心理の研究に多大な功績を残した。主著"Bricklaying System" (1909) ,"Motion Study" (11) ,"Primer of Scientific Management" (11) のほか,夫妻の共著"Time Study" (16) ,"Fatigue Study" (16) ,"Applied Motion Study" (17) ,"Motion Study for the Handicapped" (19) など。

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百科事典マイペディア 「ギルブレス」の意味・わかりやすい解説

ギルブレス

米国の工場管理技術者。経営学の科学的管理法のうち動作研究の発案者としてF.W.テーラーと並び有名。若年に煉瓦積工となり煉瓦積作業のむだを省くことから作業研究に入り,のち高速度撮影機を使って作業解析を行うなどの特徴的な方法を考案した。
→関連項目作業研究

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世界大百科事典(旧版)内のギルブレスの言及

【インダストリアル・エンジニアリング】より

…彼の基本的な考えをまとめた《科学的管理法の原理The Principles of Scientific Management》が11年に出版されIEの古典となっている。同じころ,ギルブレス夫妻Frank B.Gilbreth,Lillian M.Gilbrethが作業の能率を,作業者の疲労の軽減およびむだな動作の排除という観点から研究し,能率的な作業手順を設計する方法論を確立した。こうして,IEの基礎はテーラーの時間研究,ギルブレスの動作研究によって築かれた。…

【作業研究】より

…彼は20世紀初めころ,出来高賃金制度の基準となる作業量が1日の公正な仕事量として客観的に存在するはずだという思想に立って,これを見いだすため,時間研究time studyをはじめとする各種作業への実験科学的研究を行った。ギルブレス夫妻F.B.& L.M.Gilbrethは,人が行う作業には必ず唯一最善の作業方法が存在するはずだという思想に立ち,人間の動作を分析する微細単位のサーブリッグtherblig(ギルブレスの逆綴りによる名称)を開発し,最善作業方法を求める動作研究法motion studyを確立した。作業研究は長い間この両者の技法を軸に,motion and time studyとして発展してきた。…

【科学的管理法】より

F.W.テーラーを始祖とする工場管理の方法。狭義には,テーラーが提唱した工場労働の時間研究time studyによる標準時間と作業量の設定,職能別職長制度に,ギルブレスFrank Bunker Gilbreth(1868‐1924)が開発した作業方法の研究(動作研究motion study)による作業簡素化・標準化を加えた管理方式をいい,しばしばテーラー・システムと同義に用いられる。広義には,各種の科学的理論に基づく経営管理の方策・技術・組織制度を総称し,経験・勘にたよる管理を成行き管理として対比的に用いる。…

※「ギルブレス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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