クサウオ(その他表記)Liparis tanakae

改訂新版 世界大百科事典 「クサウオ」の意味・わかりやすい解説

クサウオ
Liparis tanakae

カサゴ目クサウオ科の海産魚。相模灘以北の太平洋側,富山湾以北の日本海側から千島付近まで分布し,水深100m前後の泥質の海底にすむ。腹びれ吸盤状に癒合する。体色は淡い灰色で暗褐色斑が散在する。体長45cmに達する。成魚は秋から冬にかけて内湾に来遊し,12~2月に浅い泥質の海底に卵を産む。卵はくっつきあって直径5~15cmほどの塊になり,海藻切れ端ごみなどに付着する。肉食性で,イカナゴコチなどの魚類,甲殻類を食べる。底引網にかかることがあるが,体がぶよぶよして食用とはならない。本科Liparidaeの魚は種類によって体型が著しく異なり,一般的には潮だまりや浅いところにすむものは体が短く,上下におしつぶされたような形が多いが,深海にすむ種類は体がやや延長して左右におしつぶされたような形で,皮膚はぶよぶよして柔軟である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサウオ」の意味・わかりやすい解説

クサウオ
くさうお / 草魚
Tanaka's snailfish
[学] Liparis tanakai

硬骨魚綱カサゴ目クサウオ科に属する海水魚。九州の中部以北の日本周辺、東シナ海黄海(こうかい)、渤海(ぼっかい)に分布する。体は柔らかく、皮膚はぶよぶよしている。頭は縦扁(じゅうへん)して幅広く、ややとがる。体は細長くて側扁する。鼻孔(びこう)は各側に2個あり、前鼻孔は管の先端に開く。鰓孔(さいこう)は大きく、胸びれの第11軟条基部に達する。尾びれのおよそ半分は背びれおよび臀(しり)びれと連なる。胸びれは幅広く、欠刻がない。腹びれは卵形の吸盤となっている。体は淡い灰色で暗青色の斑紋(はんもん)が散在する。水深100メートル以浅にすみ、おもに小形の底生魚類、エビ類などを食べる。産卵は12月から翌年2月に内湾の水深70メートルの泥底で行う。卵は直径5~15センチメートルぐらいの塊になり、海藻に付着する。体長45センチメートルぐらいになる。

 底引網などで漁獲される。一般には利用されていないが、冬に新鮮なものはおろし和え、煮つけなどにし、卵巣はしょうゆ漬けにする地方もある。

[尼岡邦夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クサウオ」の意味・わかりやすい解説

クサウオ
Liparis tanakae

カサゴ目クサウオ科の海水魚。全長 50cm内外。体は延長して細長い。頭は縦扁して幅広く,断面は四辺形。鼻孔は 2個。上顎下顎より長い。腹吸盤は卵形で大きく,その前縁は眼の下方にある。体の背方は淡灰色,腹方は淡色または赤みを帯び,暗色紋が散在する。北海道南部から長崎県・瀬戸内海,東シナ海,黄海ポー(渤)海に分布する。

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