クサカゲロウ(読み)くさかげろう(英語表記)green lacewing

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサカゲロウ」の意味・わかりやすい解説

クサカゲロウ
くさかげろう / 草蜻蛉
臭蜻蛉
green lacewing

昆虫綱脈翅(みゃくし)目クサカゲロウ科Chrysopidaeの昆虫の総称、またはそのなかの1種。クサカゲロウ類は、いずれもよく似ており、淡緑色の体色で、はねの開張30~40ミリメートルの種類が多いが、それよりやや短・長の種もある。触角は細長い。はねは幅広く、前翅後翅は同形で、薄くて透明、網目状の脈がある。低木や草上にすみ、幼虫は普通食べかすで背中を隠している。幼虫は活発で、成虫とともにアブラムシアリマキ)などの小虫を捕食し、一生に数千匹も食べるので、益虫としての価値が高い。成虫は5~9月ごろ灯火にもよく飛んでくる。つまむと独特のにおいを発するが、これが名前の由来とされることもある。また、この類の雄虫はマタタビに誘引される性質があり、誘引されると葉や茎をかじり食べる。人間にもまれにかみつくことがある。卵はテグスのような細長い柄の上につけ、これを十数本まとめて産み付ける。これがちょうど花の雄しべのようにみえ、昔の人はこれを、仏教でいう3000年に一度咲くという花になぞらえ「うどんげ(優曇華)」とよび、吉凶いずれかの前兆とした。

 クサカゲロウChrysopa intimaは、この類の代表種で、体長10ミリメートル内外、はねの開張30ミリメートル内外。全体に弱々しい虫で、体は淡緑色、目は生きているときは金色に光り、翅脈は淡緑色をしている。顔面にX形の、後頭部に四つの黒紋がある。成虫は5~9月に出現し、電灯にもよくくる。北海道、本州樺太(からふと)(サハリン)、シベリアに分布する。このほか、日本にはヨツボシクサカゲロウC. septenpunctataクモンクサカゲロウC. formosaがあり、頭部の黒紋の形や数で区別される。

[山崎柄根]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クサカゲロウ」の意味・わかりやすい解説

クサカゲロウ
Chrysopidae; lacewing

脈翅目クサカゲロウ科に属する昆虫の総称。弱々しい昆虫で,普通体と翅脈は緑色であるが,黄褐色や灰色の種もある。翅は前後ともに長卵形でほぼ同大,透明で虹様光沢がある。触角は糸状で長い。複眼は金色に輝く。卵は白色の卵形で,長い糸状の柄で他物に付着するが,俗にこれを「うどんげ」という。幼虫はアリジゴク (ウスバカゲロウの幼虫) に似て細長く,大顎でアブラムシハダニなどを捕え吸血する。老熟すると樹皮下などに球形の繭をつくり蛹化する。成虫も幼虫と同様にアブラムシなどを捕食する。捕えると悪臭を発するのでその名がある。全世界に 4000種以上を産する。日本にも相当数の種を産し,ニッポンクサカゲロウ Chrysopa nipponensis,ホンクサカゲロウ C. vittata,クモンクサカゲロウ C. formosana,ヨツボシクサカゲロウ C. septempunctataなどが日本全土にみられる。 (→脈翅類 )  

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