日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマツヅラ」の意味・わかりやすい解説
クマツヅラ
くまつづら / 熊葛
[学] Verbena officinalis L.
クマツヅラ科(APG分類:クマツヅラ科)の多年草。茎は四稜(しりょう)形で、高さ0.3~1メートル。葉は対生し、3裂または羽状に中裂ないし深裂する。6~10月、枝先に長い穂状花序をなし、淡紅紫色の小さな5弁花を開く。丘陵帯の道端や野原に生え、本州、四国、九州、沖縄およびアジア、ヨーロッパ、アフリカ北部に分布する。全草乾燥したものを馬鞭草(ばべんそう)と称し、通経薬や腫(は)れ物の薬として用いられる。クマツヅラ属は雄しべは4本、果実は4分果からなる。世界に約45種あり、そのうち日本に1種が分布する。
[高橋秀男 2021年10月20日]
文化史
古代エジプトでは農業の女神イシスの涙に例えられ、儀式で燃やされた。また、古代のギリシア・ローマ、ペルシアおよびケルトのドルイド教徒たちもこの花を神事に用い、属名のウェルベナVerbenaはラテン語で「祭壇を飾る植物」を意味する。キリスト教伝説によれば、十字架上のキリストの出血を止めた花とされ、中世ヨーロッパでは霊草として魔女除(よ)けや不眠予防、未来の予見、煩悩断ち、催淫(さいいん)、鎮静など、さまざまに用いられた。
[湯浅浩史 2021年10月20日]