広義にはクラフトパルプを原料とした紙をいうが,狭義には未さらしクラフトパルプを原料とした,このパルプ特有の茶色の紙をさす。語源はドイツ語のKraft(力)であり,クラフト紙は強度のある紙として包装用紙に広く使用されている。とくに重量がかかる米,砂糖,セメント,肥料などの包装に使用されている重袋(じゆうたい)用クラフト紙は,繊維の長い針葉樹を用いているので非常に強く,幅が10cmもあれば人がぶら下がれるほどである。吸湿を嫌うものに用いるときは合成樹脂処理を加え,2~3枚重ねて袋とする。裂け目が広がりやすい紙の性質を改善するため,糸を井げたのように入れた包装紙(筋入りクラフト紙)もある。そのほか茶色の封筒や一般用の紙袋にも使用されているが,重袋用クラフト紙を除いては古紙パルプやセミケミカルパルプが混入していることが多い。クラフトライナーもクラフト紙の一種であるが板紙に分類されている。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
未晒(みさらし)のクラフトパルプを原料とした紙の総称。茶褐色を呈し、強い。重袋用クラフト紙、筋入りクラフト紙などの包装紙や紙テープ原紙などがある。日本ではクラフト紙の原料として針葉樹および広葉樹などの木材のクラフトパルプが、一部の国では藁(わら)、バガス(サトウキビの茎を圧搾してショ糖を分離した繊維質の残物)などの非木材のクラフトパルプが、いずれも未晒の状態で用いられている。とくにセメント、小麦粉などを入れる重袋用のクラフト紙は引裂き強さなどが要求されるため針葉樹のパルプを原料とする。クラフトパルプは、抄紙に先だって粘状叩解(こうかい)を行い、さらに耐水性をもたせるため強サイズ(紙料中に膠(にかわ)状の液を加える)を行う。抄紙機としては一般に長網(ながあみ)抄紙機が、抄(す)きむらが少なく、かつ縦横の強度比の少ない紙を大量に抄造するのに向いているため用いられる。
[御田昭雄 2016年4月18日]
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クラフトパルプを原料としてつくった紙.強度的性質にすぐれている.針葉樹材からつくったクラフトパルプの場合,とくにこの性質にすぐれている.普通は未さらしパルプを用いるため茶褐色であるが,さらしパルプを用いて白色度を増したものもある.おもな用途は重包装用紙で,セメント袋に代表される.封筒,一般包装用紙にも使われ,加工してガムテープ,パラフィン紙,電気絶縁紙,研磨紙などにも用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[包装用紙]
印刷用紙が印刷を目的として表面平滑性を重視するのに対し,包装用紙は強度に重点を置き,包装に使う紙の総称である。重袋(じゆうたい)用両更(りようざら)クラフト紙はセメントや飼料,農産物などの重量物の包装袋に用いる紙で,未さらしクラフトパルプを原料としたじょうぶな紙である。厚さは0.1mm以下であるが15cmの幅があれば大人1人の体重を支えることができる。…
※「クラフト紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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