クラーゲス(読み)くらーげす(英語表記)Ludwig Klages

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラーゲス」の意味・わかりやすい解説

クラーゲス
くらーげす
Ludwig Klages
(1872―1956)

ドイツ哲学者、心理学者。ハノーバー生まれ。ミュンヘン大学に学ぶ。1905年ミュンヘンに表現学研究所を設立(1919年チューリヒ郊外キルヒベルクに移転)。筆跡学性格学、表現学の独自の体系化を試み、学問的レベルへと高めたが、これらの学の根底にはドイツ・ロマン主義の伝統を引く生の形而上(けいじじょう)学がある。彼によれば、霊魂、自然、生は精神自我理性と対立し、無時間的、抽象的理解を行う精神は生を阻害するものであり、この点から理性信仰を説くヤスパースらと対立する。霊魂の生命力を中心に据え、これらの運動は身体を通して「表現」されると考え、ここから性格に関する詳細な科学的分類と体系化を行った。筆跡学もこの思想の具体的な展開である。主著に『筆跡学の諸問題』(1910)、『宇宙論的愛』(1922)、『生の敵対者としての精神』(1929)、『表現学の基礎理論』(1936)などがある。

[小池英光 2015年2月17日]

『L・クラーゲス著、千谷七郎・詫摩武元訳『性格学の基礎』(1957・岩波書店)』『千谷七郎訳『表現学の基礎理論』(1964・勁草書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「クラーゲス」の意味・わかりやすい解説

クラーゲス
Ludwig Klages
生没年:1872-1956

ドイツの哲学者,心理学者。ハノーファーに生まれ,ミュンヘン大学などで化学物理学,哲学を学んだが,しだいに広義の心理学研究に専念した。1897年〈ドイツ筆跡学学会〉,1905年〈表現学ゼミナール〉を開設し,筆跡学,性格学,表現学の創始者となったほか,ニーチェに連なる生の哲学者,J.J.バッハオーフェンの再評価者としても知られる。主要著作には《宇宙生成のエロス》(1922),《リズムの本質について》(1923),《筆跡学入門》(1924),《心の抗争者としての精神》全3巻(1929-32)がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クラーゲス」の意味・わかりやすい解説

クラーゲス
Klages, Ludwig

[生]1872.12.10. ハノーバー
[没]1956.7.29. チューリヒ
ドイツの哲学者,心理学者。生の哲学者として知られているが,他方で近代表現学の確立に努め,1919年チューリヒのキルヒベルクに表現学研究所を設立。また性格と筆跡との関係について研究し,性格学と筆跡学とを体系化した。主著『筆跡学の諸問題』 Die Probleme der Graphologie (1910) ,『性格学の基礎』 Die Grundlagen der Charakterkunde (26) ,『生の敵対者としての精神』 Der Geist als Widersacher der Seele (3巻,29) ,『表現学の基礎理論』 Grundlegung der Wissenschaft vom Ausdruck (36) 。

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百科事典マイペディア 「クラーゲス」の意味・わかりやすい解説

クラーゲス

ドイツの哲学者,心理学者。ハノーファーに生まれ,ミュンヘン大学などに学ぶ。筆跡学,性格学,表現学の祖。〈宇宙論サークル〉を主宰してバッハオーフェンと母権制再評価の一翼をも担った。主著《宇宙生成のエロス》(1922年),《筆跡学入門》(1924年),《心の抗争者としての精神》(1929年―1932年)。

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世界大百科事典(旧版)内のクラーゲスの言及

【性格】より

…レルシュP.Lerschは層理論を応用して性格を内部感情的基底と精神生活の上層構造とに二分し,それぞれについて詳細な分析を試みている。哲学的な立場からはクラーゲスが性格を素材,性向,気性,構築,挙措の属性の5側面に分けユニークな理論を展開している。 哲学的色彩の強いドイツ性格学に比べ,アメリカの人格学は社会学,社会心理学,文化人類学などの影響下で発展している。…

【筆跡学】より

…この方面については,古くから関心がもたれていたが,フランスのミションJean‐Hippolyte Michon(1806‐81)によりグラフォロジーgraphologieという名称が初めて与えられ(1871),クレピュー・ジャマンJules Crépieux‐Jamin(1858‐1940)により理論的発展をみた。これに対してドイツのL.クラーゲスは,行動は内的精神の現れであり,筆跡は全体把握が重要とする独特の哲学的理論を基礎にした筆跡学をうち立てた。またスイスのプルファーMax Pulver(1889‐1952)は,精神分析学をとり入れた筆跡学の理論を展開した。…

※「クラーゲス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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