パンタロン(読み)ぱんたろん(英語表記)pantalon フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンタロン」の意味・わかりやすい解説

パンタロン
ぱんたろん
pantalon フランス語

ズボンのこと。語源は16世紀のコメディー・イタリアンの道化(どうけ)役者パンタローネが、裾(すそ)の開いたズボンをはいていたところから、これにパンタロンの名称があてられた。ベネチアの水夫たちがこの種のズボンを着用していたが、市民服にズボンが登場するのは18世紀のフランス革命時である。キュロット(半ズボン)をはいた貴族に対して、サンキュロット(キュロットをはかないの意)とよばれた愛国党員は、縞(しま)のパンタロンをはいたが、以後男子服にパンタロンが定着していった。

 婦人服では、19世紀中ごろのクリノリンの下にはかれたズボン式の下着に、この名称があてられており、英語ではこれをパンタレッツpantalettesと称した。パンタロンが表着として婦人服に登場するのは20世紀のスポーツ服になるが、その後スカートと並ぶボトムズ(下半身衣)として多様にデザインされてきた。日本ではとくに、1960年末にサン・ローランが発表したパンタロン・スーツからこの語が定着し、婦人用のズボンに対して用いられる。米語ではパンタルーンズpantaloonsといったが、それを短縮したパンツpantsが一般化している。

[辻ますみ]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パンタロン」の意味・わかりやすい解説

パンタロン
pantalon(pantaloon)

元来は長ズボンを意味するフランス語。英語のトラゥザーズ trousers,パンタルーン pantaloonと同義。 16世紀中期イタリア喜劇の道化役者パンタローネが,細い長ズボンをはいたことに由来する。この語が一般化するのは,男性の長ズボンが普及する 19世紀初期で,女性の場合,19世紀前半まではスカートの下にはいたパジャマズボン形式の下着をパンタレッツと呼んだが,スポーツ用として長ズボンがはかれるのは 1930年代以降である。またスラックスの語に代って,日本でこの語が一般化したのは,裾幅の広いズボンが女性服に流行した 60年代末以後のことである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報