翻訳|chemise
肩からひもでつって胴部から大腿部をおおう女性用下着を指す。シミーズとも呼ばれ,最近では上の衣服を着やすくするために用いるスリップもシュミーズと呼ぶことが多い。語源は〈麻のシャツ〉を意味するラテン語のカミシアcamisiaに由来。英語では女性の下着のみを指し,フランス語では現在は男性用のワイシャツを指すが,古くは男女が着用する下着を指していた。中世初期にはシュミーズは表着(うわぎ)のコットと呼ばれるチュニックの下に着用され,フランスでは上等なものは白い上質の麻製であった。中世半ばにシェーンズchainseとも呼ばれる,足首にまで届く丈の長い,袖口のぴったりしたシュミーズが現れ,男女に着用された。庶民は粗末な羊毛製のものを防寒のために着用していた。中世を通じて,シュミーズの形は簡素なチュニックであったが,近世に入ると装飾が華やかになり,ししゅう,レース,ギャザーで飾られ,袖もゆったりしたものが現れた。16世紀から17世紀にかけては,衣服一面に切り込みを入れ,切り込みから白いシュミーズをのぞかせるスラッシュ(裂け目装飾)が流行し,白い清潔なシュミーズが注目された。17世紀から18世紀にかけては,貴族の服装に,ししゅう,フリル,レース飾りのついたシュミーズは不可欠であったが,イギリスでは,ヘンリー8世在位(1509-47)中は貴族に対して襞(ひだ)のある,金銀のししゅうのついた絹製のシュミーズの着用を禁じた。女性のシュミーズは,イギリスでは13世紀ころからスモックと呼ばれ,装飾性が強まり,17世紀ころには新年の贈物にも使われた。19世紀に,男性のシュミーズがワイシャツとなり,フロックコート,長ズボン,ベスト,ネクタイという服装様式が確立すると,ワイシャツの下に別の下着が着用されるようになった。20世紀に入ると,シュミーズは,直線状の輪郭をもつ簡単なものになり,袖なしや袖つき,肩ひもつきのものなどが現れた。
→下着
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
亜麻(あま)製の下着を意味するラテン語、カミシアcamisiaが語源。12、13世紀ごろのフランス語シェーンズchainseを経て、シュミーズに置き換わった。英語のシャツにあたる。本来、男女の肌着(胴部につける)全般をさしていうのであるが、英語に入った時点で、婦人用の長い胴着をとくにシュミーズといったため、日本でも男子用肌着をシャツ、婦人用のそれをシュミーズといって、英語式に区別するのが一般となった。16世紀から19世紀まで、男性のシュミーズ(シャツ)は上着からはみ出す部分、つまり首回り、袖口(そでぐち)、裾(すそ)が装飾的役割を果たしていたことが多く、レース、リボン、フリルなどで飾った華やかなものがみられた。これに対し女性用のシュミーズは、吸汗、保温など、実用本位の目的で使用されてきた。
[菅生ふさ代]
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