キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)センニンソウ属の総称。常緑または落葉性の藤本(とうほん)(つる植物)で、茎は細く、葉柄が曲がって他物に絡みつく。葉は一般に3~9枚の小葉からなる複葉。花は4~8枚の花弁状の花被(かひ)、多数の雄しべ、多数の離生心皮からなる雌しべがある。果実は痩果(そうか)で、先に花期後伸長した羽毛状の花柱がある。世界の温帯を中心に熱帯から亜寒帯に広く分布し、300種ほど知られる。日本にはカザグルマ、クサボタン、センニンソウ、ハンショウヅルなど25種が分布する。
園芸上でクレマチスといわれるものにC. lanuginosa Lindl.(藤(ふじ)色の8弁花)などがある。テッセンC. florida Thumb.は白色の6弁花で中央に多数の雄しべがある。カザグルマC. patens Moor. et Decne.は白、藤、紫色の8弁花で多花性。C. viticella L.は紫色の4弁花。キダチテッセンC. integrifolia L.は淡紫色で4弁の小花をつける。これら数種類の交雑によって多くの品種がヨーロッパで作出され、現在は各国で品種改良が進められている。
おもな園芸品種としては、紫色系のザ・プレジデント、白王冠、江戸紫などのほか、青色系の藤娘、ラザー・スターン、紅色系のクリムソン・キング、桃色系のコンテス・ド・ボシャール、覆色系や黄色系の原種であるタングチカなどがある。これらの品種は支柱に絡ませてつくるが、近年は支柱のいらない半つる性で鉢植えに適した品種(「たてしな」など)もつくられている。
[金子勝巳 2020年3月18日]
繁殖は挿木、接木(つぎき)とも可能であるが、近年はほとんど挿木で殖やす。挿木の適期は6~8月で、開花後に伸びた新梢(しんしょう)を2~3節のところで切り、鹿沼土(かぬまつち)や「ピートモス」「パーライト」などに挿す。生育適温は20~25℃で、夏の高温にはとくに弱いので西日の当たらない半日陰で風通しのよいところで育てる。鉢植えは風通しのよい木陰で夏を越させるとよい。耐寒性は非常に強く、冬越しは容易である。用土は、有機質に富んだ肥沃(ひよく)で保水力が強く排水のよいものがよい。多肥栽培でよく成長する。花期後は花がらを摘み取り、枝をやや切り詰めると新梢が発生し、よい花をつける。
クレマチスはネマトーダ(線虫類)の被害に弱く、生育が害され枯死することもあるので、定植前にかならず殺ネマトーダ剤で消毒する。また高温期には立枯病が多発生しやすいので、高温に当てないようにする。
[金子勝巳 2020年3月18日]
テッセンは中国原産で、日本へは15世紀後半までに渡来していた。室町時代の『黒本節用集(くろほんせつようしゅう)』や『文明本(ぶんめいほん)節用集』に鉄線花の名で載る。カザグルマは日本原産で、元禄(げんろく)時代には品種分化がみられ、『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)に白、薄紫、瑠璃(るり)色と八重咲きが記録されている。ヨーロッパには、19世紀の初めにシーボルトがテッセンを伝えた。また1830年代に、イギリスのヘンダーソンによって交雑育種が開始され、品種改良が進んだ。
[湯浅浩史 2020年3月18日]
キンポウゲ科センニンソウ属Clematisのつる性多年草。この属は世界の温帯地方で200種以上あり,なかでも園芸的にクレマチスと総称されるものは中国産のテッセンC.florida Thunb.,ラヌギノーサC.lanuginosa Lindl.や日本産カザグルマC.patens Morr.et Decne.,およびこれらの種が関係した交配種であることが多い。
観賞用のクレマチス類は寒さに強く,つる丈2~3m。茎はやや木質化する。葉は対生,葉柄は長く,他物にからむ性質が強い。花弁のように見える萼片は4~8枚だが,八重のものもあり,大きくて,花径は10~15cmになる。花は,前年伸長した茎の先端や側枝に単生または円錐花序につく。おしべとめしべは多数あり,瘦果(そうか)(実)が成熟すると,宿存する花柱に長毛があるため羽毛の球のように見え,美しい。花期は5~10月。
200品種以上もある観賞用のクレマチス類は数種の野生種と,それらの交配から育成された園芸植物であり,交配の親になった野生種を基にして,園芸上は通常次の5群にわけられる。(1)ラヌギノーサ(Lanuginosa)群,(2)カザグルマ(パテンスPatens)群,(3)テッセン(フロリダFlorida)群,(4)ジャクマニー(Jackmani)群,(5)テキセンシス(Texensis)群である。
ラヌギノーサ群は,中部中国原産で花が大型のC.lanuginosaを基本にして育成されたもので,テッセンやカザグルマと交配され,直径20cmもの大型の花をつけるものが作出されている。
カザグルマ群は日本の中部以南に自生するカザグルマを基本に育成された品種群で,この原種の花の大きさは10cm内外,白色や淡紫色などがある。花期は5~6月,一季だけである。変種にユキオコシ(別名キクザキカザグルマ)C.lanuginosa f.alba Makinoがあり,花色は白色からしだいにグリーンを増してゆく。ルリオコシC.lanuginosa f.coerulescens Makinoは八重咲きで紫色咲き,一名フジボタンとも呼ぶ。また,園芸品種には江戸紫(ビロード状,濃紫),白王冠(紫色で中心が白),伊勢原(藤色で大輪花)などがある。
テッセン群は中国中部の原産のテッセンを基本にした品種群である。テッセンは日本に最も古く導入されたが,カザグルマと同様一季咲種で花の大きさは6~8cm,白色と紫色系がある。園芸品種にエンチャントレス(Enchantress,白色花)や,アンディヌ(Undine,紫色花)がある。
ジャクマニー群は,1862年にイギリスのジャクマンG.Jackmanがラヌギノーサにヨーロッパ産のC.viticellaなどを交配して作出した品種群が基本になっており,開花期間が長く,花の美しい逸品が多い。現在日本における栽培品種の多くは,この品種群のもので,マダム・バン・ホーテ(Mme.Van Houte,白色大輪咲き),ザ・プレジデント(the President,紫色大輪咲き),クリムソン・キング(Crimson King,紅色大輪種),ミセス・N.トンプソン(Mrs.N.Thompson,濃紫色に濃紅色筋入り),ネリー・モーザ(Nelly Moser,桃色赤筋入り)などがある。
テキセンシス群は北アメリカ南部原産の赤色花をつけるC.texensis Buchl.を基本としたもので,花はつぼ形となる。カザグルマ等との交配品種もある。
クレマチスは垣根や花壇に植えたり,鉢作りにされるが,日当りの良い排水の良好な場所で,極度の粘質土,砂質地は避けて植える。定植前に堆肥腐葉土を混入して排水の良い肥沃な床を作る。定植の時期は,春や秋の彼岸前後がよい。肥料は春と晩秋に骨粉,魚粕,油粕を基肥として施し,中間にも追肥を施す。剪定(せんてい)は枯枝を取り除く程度とし,ジャクマニー群のような四季咲種はある程度,強度の剪定をしてもよいが,カザグルマの系統は不可である。繁殖には実生,株分け,接木,挿木の方法があるが,5~9月頃の挿木が一般的である。種子には深い休眠性があるが,その間乾燥すると発芽しないので注意を要する。
執筆者:西部 由太郎
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(森和男 東アジア野生植物研究会主宰 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…日当りのよい路傍の灌木林やブッシュ状の疎林でふつうに見られるキンポウゲ科のつる性の半灌木(イラスト)。茎の少なくとも下部は木化し,枯れずに越冬する。葉は対生し,羽状複葉,小葉は5枚で鋸歯はない。葉柄や小葉柄が木の小枝などに巻きつく。8~9月,枝の先端や葉腋(ようえき)より3出集散状の花序を出し,全体としてしばしば大きな円錐状になる。花は白色,上を向いて全開し,直径2~3cm。萼片は4枚,花弁はなく,おしべは多数,めしべも多数で花柱は長く,白毛がある。…
…本州から九州,朝鮮から中国大陸南部にかけて分布する。 センニンソウ属Clematis(英名virgin’s‐bower)は全世界の温帯を中心に分布し,200種以上が知られている。園芸植物も多く,クレマチスと総称される。…
※「クレマチス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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