火山噴出物である浮石(ふせき)(軽石)が風化したもので、栃木県鹿沼市付近を中心とした火山灰土壌の2~3メートル下層に1メートル程度の幅で分布しているのでこの名がある。数万年前に赤城(あかぎ)山から噴出したものといわれる。正確には浮石の風化物で土ではない。黄褐色の軟らかい塊状をなし、多孔質で養分の吸収力は弱い酸性土であるが、水分の保持力に富み通気性もよい。普通の土壌に比べて容水量が大きいため、一度給水すると数日間保水しており、また粒子間のすきまが大きいため通気性がよい。このように保水と通気性に優れているのが鹿沼土の特徴で、盆栽など鉢植えの園芸植物の培養土としてとくに賞用されている。鹿沼土の使い方は単独で用いる場合と、他の土と混合して用いる場合とがある。サツキ、ツツジ類には単独で用いる。また挿木の用土にも適している。浮石の堆積(たいせき)層は鹿沼地方以外にも多くみられ、九州南部の桜島周辺に分布する「ぼら」、長野県南部に主として分布する味噌土(みそつち)などがよく知られる。
[小山雄生]
赤城火山から更新世末に噴出した軽石の黄色風化物で,園芸用土として一般にその名が知られる。鹿沼軽石層とも呼ばれる。赤城火山をかなめにして東方に扇形に分布し,その総量は体積にして約66億m3と見積もられている。ひろく分布する栃木県鹿沼市付近では,地表下2m付近から厚さ1.5m程度の地層として出現する。直径数mm程度の丸みを帯びた軽石がその形を留めたまま風化,粘土化し,アロフェンやイモゴライトが生成している。風化軽石粒子は空隙に富むので水持ちがよいと同時に,粒子どうしのすきまは良好な通気性を与える。一方,多量の活性なアルミニウムによって根があまり伸びないために,草花や盆栽用樹木などの培養土として賞用される。なお栃木県今市市付近で,火山灰の厚い黒色表土の直下に類似の風化軽石層があり上部鹿沼土と呼ばれることがあるが,これは男体火山起原で別物である。
執筆者:三土 正則
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…その後,噴火が繰り返され,浸食が進んだ古期成層火山体頂部に火砕岩からなる新期成層火山が形成された。5万年ほど前に小カルデラが形成され,4万年前,溶岩円頂丘が形成される前に鹿沼土と呼ばれ盆栽に広く用いられる鹿沼降下軽石が小カルデラから噴出した。1万年前の小沼をつくった爆裂活動以後,目立った活動はないが12世紀に噴火したという記録が《吾妻鏡》に〈上野国赤城岳焼〉として記されている。…
… 用土を補助する材料には次のものが多く使われる。(a)鹿沼土(かぬまつち) 栃木県鹿沼市を中心に産出する黄色の酸性土。砕いたものは保湿力があり,とくにサツキの栽培に適するほか,山野草にも,また一般植物の挿木,挿芽用土として絶好である。…
…長野県南部のみそ土(つち)と呼ばれる風化軽石層は,その外観が粒みそ状であるところから名づけられた。北関東の鹿沼土,今市土もそれぞれ特徴ある外観をもつ風化軽石層である。一方鹿児島の姶良(あいら)カルデラから噴出したとされる厚い軽石堆積物は〈シラス〉と呼ばれる。…
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[軽工業主導型から重工業加工型へ]
江戸時代初期に発見され,日本有数の銅山として知られてきた足尾鉱山は1973年に閉山されたが,そのほかの鉱産物としては,足尾山地のマンガン,ドロマイト,石灰石,宇都宮市の大谷(おおや)石がある。また赤城山から噴出した軽石が風化,粘土化した鹿沼土は,園芸・盆栽用として愛用されている。 栃木県の近代工業は,1871年に立地した宇都宮市の繊維工業に始まるが,第2次大戦前は足利・佐野地区などの繊維工業を中心に(足利織物),日光地区の金属工業,県内各地の食料品・木材工業,葛生・益子(ましこ)両町の窯業などがおもなもので,全体的には軽工業主導型であった。…
※「鹿沼土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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