改訂新版 世界大百科事典 「クロナガアリ」の意味・わかりやすい解説
クロナガアリ
Messor aciculatum
膜翅目アリ科の昆虫。働きアリの体長は5mm前後,全体に黒色で腹部には光沢がある。巣は日当りのよい草のまばらに生えているような土地につくられ,ほぼ垂直な1~2本の坑道とそれに接続する小室とからなり,深さ3~4mに達するものがある。4,5月ころ,羽アリが婚姻飛行を行うとき以外は春や夏にも巣口が閉ざされており,秋から初冬にかけて巣外活動を行うが歩行などの活動は一般のアリに比べて緩慢である。収穫アリの1種で,草の種を集め巣の小室に蓄え食糧とする。巣の中に蓄えられている種子は発芽力を保っているが,巣内では発芽しない。幼虫は種を自力で食べて育つ。東北地方の中部以南から九州にまで分布し,朝鮮半島,中国にも生息している。九州以北の平地にふつうに見られるトビイロシワアリTetramorium caespitumも草の実を集める習性があるが,本種のような完全な穀食性ではない。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報