日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロユリ」の意味・わかりやすい解説
クロユリ
くろゆり / 黒百合
[学] Fritillaria camschatcensis (L.) Ker-Gawl.
ユリ科(APG分類:ユリ科)の多年草。地下の鱗茎(りんけい)より高さ10~50センチメートルの茎を出し、数段の輪生葉をつける。葉は披針(ひしん)形、開出し、長さ3~7センチメートル、幅1~3センチメートル。7~8月、茎頂に黒紫色、広鐘形の花を開く。高山に生育するものは2n=24の二倍体で、花が1~2個であるのに対し、北海道以北の低地に生育するものは2n=36の三倍体で、より大形の花を3~7個つける。短い花柄がある。花被片(かひへん)は6個、菱(ひし)状長楕円(ちょうだえん)形または倒披針状楕円形、先は鈍くとがり、長さ2.5~3センチメートル、内面基部に腺体(せんたい)がある。雄しべは長さ1.5ミリメートル内外、花柱は基部から3裂する。果実は長さ2~2.5センチメートル、倒卵形、直立につく。三倍体は稔性(ねんせい)がない。名は、花色にちなんでつけられ、富山県立山(たてやま)などで古くからいろいろの伝説がある。本州中部以北の高山、千島、カムチャツカから北アメリカに広く分布する。
[河野昭一 2018年12月13日]