改訂新版 世界大百科事典 「クローン選択説」の意味・わかりやすい解説
クローン選択説 (クローンせんたくせつ)
clonal selection theory
1957年にバーネットF.M.Burnetによって提唱された免疫理論。高等動物は異物(抗原)の侵入に対して抗体を産生する。産生された抗体は,その抗原に対して特異性をもつ。この特異性を説明する理論として提唱されたのがクローン選択説である。
この説の骨子は,(1)個体発生の初期(胎生期ないし新生期)に抗原に特異的に反応する細胞(すなわちクローン)がランダムに生じる,(2)そのなかから自己抗原に対応したクローンは禁止(消去)されるので外来抗原に対応したクローンのみが存在するようになる,(3)外来抗原は生体に侵入したとき特異的クローンを選択してその細胞を増殖させる,というものである。この説は,それ以前に提唱された鋳型説(抗原が鋳型となって特異的抗体タンパク質が合成されるとする説)に比して多くの免疫現象がうまく説明でき,近代免疫学の発展に多大の貢献をした。その後のさまざまな実験事実からも今日でも基本的に正しい理論として免疫学者に受け入れられている。
→免疫
執筆者:藤原 道夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報