クロー族(読み)クローぞく(その他表記)Crow

翻訳|Crow

改訂新版 世界大百科事典 「クロー族」の意味・わかりやすい解説

クロー族 (クローぞく)
Crow

北アメリカ大平原地方北部のミズーリ川上流域に居住するインディアン。言語はスー語族に属する。ミズーリ川中流域のヒダツァ族から分離したといわれる。トウモロコシ,カボチャ,マメ,タバコの栽培とバイソンの狩猟がおもな生業であった。狩猟具は弓矢で,わな,落し穴や崖から追い落とす方法もとられた。野いちご,根茎類の採集も行った。住居は円錐形のティピを使用した。衣類はバイソンや野生の羊の毛皮を材料にし,シャツ,ローブ,すね当て,モカシンなどに加工した。ヤマアラシの針から作ったビーズや交易で入手した海産の貝などで装飾した。運搬用具は犬や馬に引かせるトラボイであった。おもな道具には柳製の背当て,木・角製の容器,ペミカン(干肉の粉末を主材料とした保存食糧)用の石槌などがあった。胞族氏族の結合体)組織を有し,胞族を構成する母系氏族が外婚単位になった。バンド組織も存在し,軍事をつかさどる結社が治安を維持した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロー族」の意味・わかりやすい解説

クロー族
クローぞく
Crow

ミズーリ川上流のイエローストーン川およびその支流地域に居住していた北アメリカインディアンの一民族。スー語を話す。かつてはヒダツァ族と隣接して暮していたが,18世紀初頭に別れて西方に移動した。3つのバンドから成ったが,本来は2つであったと考えられる。彼らの生活は野牛とウマが中心で,野牛は食糧,衣服,テント,糸,容器,楯の材料を提供した。ウマの略奪をめぐって戦争が繰返された。食物や家屋,衣服の製作は女性の仕事であった。宗教生活では,断食やみずからの身体に串を刺すなどの荒行によって超自然的な幻視力を身につけ,守護神から呪物の束を授かることが最重要とされた。タバコは敵を打負かすために神から与えられたものとして儀礼的に栽培された。たばこ結社は,クロー族の多くの結社のなかでも,厳粛な入社式 (→イニシエーション ) と高い会費を必要としたが,原則として夫も妻も参加が認められていた。ブラックフット族ダコタ族,そして白人との戦争に敗れたため,1868年にはモンタナ州南部の狭小な指定居留地に移住。今日では人口約 5000と推定され,その多くが居留地以外の土地に住んでいる。

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世界大百科事典(旧版)内のクロー族の言及

【アメリカ・インディアン】より

…そして,バイソンが最も特徴的な大型動物であった。 この領域のおもな原住民はクロー族シャイアン族,カイオワ族などであるが,伝統的には河岸段丘の上で小規模な農耕を行い,季節的には野生植物の採集を行った。また,徒歩によるバイソンの狩猟も行われていた。…

※「クロー族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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