デジタル大辞泉
「グッドパスチャー症候群」の意味・読み・例文・類語
グッドパスチャー‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【グッドパスチャー症候群】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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グッドパスチャー症候群
グッドパスチャーしょうこうぐん
Goodpasture's syndrome
(呼吸器の病気)
1919年、インフルエンザ罹患後に肺出血と急速に進行する腎不全で死亡した18歳男子の症例報告が最初のものです。日本では現在まで約50例の報告がなされているにとどまります。
肺胞壁の基底膜と、腎の糸球体にある基底膜の両者に反応する抗基底膜抗体が血中につくり出され、肺出血と糸球体腎炎が引き起こされます。
抗基底膜抗体という自己抗体(自己の成分に対する抗体)がどうしてつくられてくるのか明らかではありませんが、ウイルス感染、喫煙、揮発成分の吸収などとの関連が考えられています。上気道感染症が先行する例は、約30%といわれています。
血痰、喀血、咳、呼吸困難がみられ、さまざまな程度の肺胞出血が初発症状の90%以上を占めます。疲れやすい、倦怠感、悪寒、発熱などの感冒の症状がみられることもあります。腎障害は血尿、蛋白尿として自覚されます。進行すると悪心、吐き気などの尿毒症症状が出てきます。
出血のために貧血が進行すると、顔面・皮膚の蒼白化が認められます。進行例では腎不全に伴う高血圧、浮腫などがみられます。
繰り返す血痰で始まることが多く、腎症状は呼吸器症状が現れてから、2~3週ないし数カ月後に認められます。
血液検査では鉄欠乏性貧血のパターンを示します。胸部X線写真では両側に境界不明瞭な陰影が認められます。抗基底膜抗体が陽性であれば、確定診断の可能性が高くなります。
自己抗体である抗基底膜抗体の産生を抑えるため、副腎皮質ホルモンや免疫抑制薬を用います。抗体を除去するため血漿交換療法を行うこともあります。
肺出血と腎障害を示す疾患にはさまざまなものがあります。いずれも生命に関わり緊急を要するものが多く、適切な診断を要します。グッドパスチャー症候群のほか、膠原病に伴うもの、全身血管炎症候群、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病などが重要なので、総合病院で系統的な検査を受けることが大切です。
千田 金吾
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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「グッドパスチャー症候群」の解説
ぐっどぱすちゃーしょうこうぐん【グッドパスチャー症候群 Goodpasture Syndrome】
[どんな病気か]
1919年に、アメリカの医師グッドパスチャーが世界で最初に報告したために、この病名がつきました。
せきやたんが出ることはもちろんですが、肺の出血によって、血(けっ)たん(血液のまじったたん)が出たり、ときには大量の肺出血によって喀血(かっけつ)がおこると同時に、腎臓(じんぞう)では糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)(急速進行性腎炎症候群(「急速進行性腎炎症候群」))が進行して、腎不全をおこし、死に至ることのある病気です。
欧米では、若い男性に多く発病するといわれていますが、日本では、女性にも高齢者にも、この病気がおこることが少なくありません。
[原因]
通常は、肺胞(はいほう)の表面の基底膜(きていまく)という部分の構造と、腎臓の基底膜の構造は異なっています。
しかし、インフルエンザなどのウイルスによって肺胞がおかされたりすると、腎臓の基底膜の構造とよく似た構造が、肺胞の壁に現われてくることがあります。
こうした場合に、肺胞の壁にできた腎臓の基底膜の構造に対する抗体(こうたい)が血液中につくられることになり、アレルギー反応によって、肺胞の壁が障害されて出血をおこしたりします。
それと同時に、あるいはときに少し遅れて、腎臓もアレルギー反応によって障害され、糸球体腎炎がおこってきます。
[検査と診断]
原因不明の肺出血があり、それと同時に、尿にたんぱく質が出ている(糸球体腎炎が疑われる)場合、血液中に腎臓の糸球体の基底膜に対する抗体が検出されれば、診断がつきます。
[治療]
持続する肺からの出血によって生じる鉄欠乏性貧血に対しては、鉄剤が用いられます。
また、全身的なアレルギー反応を抑えるために、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬が用いられます。
腎臓の機能不全が進行した場合には、人工透析などが行なわれます。
[日常生活の注意]
現在では、人工透析の技術も進歩しており、また、副作用の少ないステロイド薬も開発されていますので、この病気にかかっても、喀血に対する処置さえまちがえないようにすれば、以前に比べて、長く人生を送れるようになっています。
予防としては、かぜ(インフルエンザなど)にかかった場合には、よくからだを休め、合併症がおこらないように、早い時期に治すことがたいせつでしょう。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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