翻訳|Grand Canyon
アメリカ合衆国、アリゾナ州北部にあるコロラド川の大峡谷。コロラド高原の西部にあり、リトル・コロラド川との合流点付近からミード湖に至る約350キロメートルの区間にある。規模雄大で、幅6~30キロメートル、深さ1600メートルに達する。谷壁は階段状になっており、植生がなく、先カンブリア時代からペルム紀(二畳紀)の地層までの岩相が観察できるため、地質学的にきわめて重要な場所である。最下部の先カンブリア系(下部がアーキアン、上部がアルゴンキアン)を不整合にカンブリア系が覆い、オルドビス系とシルル系を欠いて平行不整合にミシシッピ系とペンシルベニア系がのり、最上部を二畳系のカイバブ石灰岩が覆い、台地の表面を形づくっている。さらに中生代の地層がのっていたが、過去の侵食により消滅したと考えられる。かつてユタ州南部からアリゾナ州北部にかけて南北に細長い隆起帯が生じ、コロラド川はその東側の内陸水系と西側のフアラパイ水系とに分かれていたが、後者がこの隆起帯をしだいに侵食しながらグランド・キャニオンを形成し、ついに内陸水系を奪ったのである。
峡谷の北側をカイバブ高原、その縁をノース・リム、南側をココニノ高原、その縁をサウス・リムとよぶ。中心部は1919年にグランド・キャニオン国立公園として指定され、多くの観光客が訪れている。サウス・リムは一年中入園できるが、ノース・リムは夏季だけ開園される。峡谷を横切るには、徒歩やロバに乗って通る小道しかなく、対岸へ自動車で行くには最短で350キロメートルもの迂回をする必要がある。縁から望む谷壁の景観は雄大で、とくに朝日と夕日を浴びたときの光景はすばらしい。やや下流側には1932年に指定されたグランド・キャニオン国定記念物公園がある。ここには峡谷の縁に約100万年前の新しい火山がのっており、溶岩が谷壁を流下した跡がある。峡谷は1540年にヨーロッパ人として初めてスペインのカルデナス隊によって発見された。
[鶴見英策]
アメリカ合衆国南西部,コロラド川中流部の大峡谷。アリゾナ州北西部にあり,付近一帯は1919年指定のグランド・キャニオン国立公園(面積2726km2)。コロラド川がコロラド高原を刻んだ峡谷で,谷の深さが1600m以上に達するところもある。多くの段丘をもつ絶壁が400km以上にわたって連続し異様な景観をなす。谷壁の地層はほぼ水平で,最下部は最古の始生代,最上部は新生代の地層からなる。地層の色彩はさまざまだが,乾燥地域のため全体としては赤みを帯びている。両岸をつなぐ橋は狭い吊橋が1本あるだけで,自動車は通れない。下流部はミード湖国立レクリエーション地域に指定されている。冒険的な川下り,ラス・ベガスからの遊覧飛行でも知られる観光地である。1540年にスペイン人G.L.deカルデナスが白人としては最初にこの地を訪れ,スペイン語で〈大峡谷Grand Cañon〉と呼んだ。
執筆者:正井 泰夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,乾燥気候下にあり,谷壁斜面上で雨食や風化が進まない地域の方が峡谷の形成に好都合な条件を備えている。世界的に有名なアメリカ合衆国のグランド・キャニオンは,コロラド川がコロラド高原を延長450kmにわたって平均1600mの深さに下刻した結果である。また同国のヨセミテ峡谷は花コウ岩の垂直な絶壁で知られるが,峡谷の原形は氷河の浸食によってできたものである。…
※「グランドキャニオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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