日本大百科全書(ニッポニカ) 「グラーニン」の意味・わかりやすい解説
グラーニン
ぐらーにん
Даниил Александрович Гранин/Daniil Aleksandrovich Granin
(1919―2017)
ロシアの作家。本名ゲルマンГерман/German。レニングラード工業大学を卒業したのち、第二次世界大戦に重戦車隊隊長として従軍。科学技術者として多年の業績をあげたのち、短編『第二のバリエーション』(1949)で作家活動に入る。出世作『探求者』(1954)をはじめ、『個人的見解』(1956)、『結婚式のあとで』(1958)、『雷雲への挑戦』(1962)、『帰りの切符』(1978)、『絵画』(1980)などの長編は、科学研究者の世界におけるスターリニズム告発をテーマとする。さらに戦中派作家の代表として、『レニングラードのカタログ』(1986)、『禁じられた章』(1991)、『われらが愛するロマン・アンドレービチ』(1991)、『ロシアへの逃亡』(1997)など、つねにソビエト・ロシア社会の善と悪を鋭く見据えた作品が多い。A・アダモービチАлесь М. Адамович/Ales' M. Adamovich(1926/1927―1994)との共作にレニングラード攻防戦を記録した『包囲の書簡』(1977)があり、また紀行文として『若者たちの島』(1962)、『逆立ちの月』(1966)、『旅行ガイドへの数言』(1967)、『石庭』(1971)、『他人の日記』(1982)、『ピョートル大帝との夜な夜な』(2001)など作品多数。随想風の『二つの貌(かお)』(1968)もある。グラーニンの作品は多く映画化され、話題をよんでいる(1965年の『雷雲への挑戦』、1966年の『最初の客』ほか)。また作品の翻訳も英、独、仏、スペイン、イタリア、チェコ、ポーランドをはじめ多数にのぼる。1997年からロシア共和国国家賞文学部門選考委員、のちに委員長を務める。
[安井侑子]
『木村浩ほか訳『ソヴェト短篇全集 第3巻 今次大戦以後』(1955・新潮社)』▽『川上洸訳「雷雲への挑戦」(『新しいソビエトの文学4』所収・1974・勁草書房)』▽『佐藤祥子訳『ズーブル――偉大な生物学者の伝説』(1992・群像社)』▽『アレーシ・アダーモビチ、ダニール・グラーニン著、宮下トモ子ほか訳『封鎖・飢餓・人間――1941→1944年のレニングラード』上下(1986・新時代社)』