グループ・セラピー(読み)ぐるーぷせらぴー(英語表記)group therapy

翻訳|group therapy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グループ・セラピー」の意味・わかりやすい解説

グループ・セラピー
ぐるーぷせらぴー
group therapy

集団療法。社会生活における不適応はつねになんらかの集団関係のなかで生じるが、治療的に構成された集団場面で、態度変容を促す新しい体験を学習させるのが集団療法である。集団療法は、普通1905年にアメリカの内科医J・H・プラットが結核患者の集団に行ったのを始まりとしている。独自の治療法として認められるようになったのは50年代以降である。集団療法はまた集団心理療法ともよばれる。この場合はいっそう体系的な技法を備えたものをさすが、近年一般システム理論から理論的反省を加える立場が注目された。

[台 利夫]

グループ・セラピーの特性

その第一は、集団成員の間の相互作用によって、個々の成員の自我が支持され、また反省が促されて自他への理解が深まることである。ただし個人療法のように、個人の内面の世界にかかわるよりはおもに社会的態度がとりあげられる。その第二は、現実検証が個人療法より直接的に「いま、ここで」の場で行われることである。治療者・患者間の権威勾配(こうばい)が緩やかな一方、成員間では率直な批判が交わされる。だが治療者は相互作用を促す一方、自由でリラックスした雰囲気をつくることで衝撃を和らげ、認知分化統合を進める努力をする。つまり、その場は、なかば現実的で、なかば非現実的性格をもっている。この集団は普通10人以下の成員からなる。性別、年齢、職業などの同質性―異質性、成員の指定にかかわる閉鎖集団―開放集団などの別があげられる。よりよい集団発展のためには、現場の状況や成員の種類、状態に応じて、集団を弾力的に構成する必要がある。とくにたいせつなのは、集団の発展過程にかかわる活動刺激者、過程推進者などの諸役割をとれる人の存在である。治療過程はおおむね、(1)沈黙期、(2)依存期、(3)再度の沈黙期、(4)体験表出期の4段階からなる。その進行とともに積極的な参加者が増え、相互作用は活発化し、治療者の役割は漸次に成員に委譲されていく。

[台 利夫]

グループ・セラピーの技法

技法は治療者が個人への治療的働きかけを「集団によって」進めるか、「集団のなかで」行うかの基本的構えと絡んで異なる。前者はJ・L・モレノMorenoの立場に近く、後者はS・R・スラブソンSlavsonの精神分析の立場に属する。技法の実際面としては、討議法と活動法あるいは両者併用の場合があげられる。討議法は自由な発言のやりとりで、これはいわゆるグループ・カウンセリングgroup counselingにほぼ等しく、エンカウンター・グループencounter groupや感受性訓練とも近接する。この場合、クライアントclient(来談者)中心的療法派の治療者は成員の自発的発言を徹底して尊重するが、他の立場では初期的段階では治療者が指導性を発揮することが多い。

 活動法では玩具(がんぐ)(集団遊戯療法)や舞台(心理劇)、身体運動(キネジkinesi(身体運動)療法やダンス療法)や音楽(音楽療法)などの手段を用いて、非言語的交流やカタルシスを促進する。技法の選択は成員の種類、つまり児童か成人か家族か、神経症患者か統合失調症(精神分裂病)患者か、などによって規定される面が大きい。治療者は身につけた技法に拠(よ)りながらも、集団の特性に応じて弾力的に働きかけ、方向づけ、治療効果をあげていかなければならない。

[台 利夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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