ケソン市(読み)ケソン(その他表記)Kaesǒng

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケソン市」の意味・わかりやすい解説

ケソン(開城)〔市〕
ケソン
Kaesǒng

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)南西部の都市。北緯 38度線の少し南,大韓民国(韓国)の首都ソウル特別市北西 70kmに位置する。標高 500m以下の山に囲まれた丘陵性の盆地にあり,西方にイェソン(礼成)江流域,南東方にイムジン(臨津)江流域の沃野を控える。マツの茂る山々に囲まれていることから,ソンド(松都)と呼ばれることもある。朝鮮最古の都市の一つで,新羅の時代にソンアク(松岳)郡と呼ばれ,高麗の時代には首都が置かれて壮大な都城が築かれた。1394年に李氏朝鮮(→朝鮮王朝)がハンソン(漢城。今日のソウル)に遷都してのちも商業中心地としてにぎわった。第2次世界大戦後,38度線より南のケソンはアメリカ合衆国の管理下に入り,1948年には独立した韓国の統治下に置かれたが,1950年朝鮮戦争勃発直後に北朝鮮軍に占領された。1951年最初の朝鮮休戦会談の地となり,1953年の休戦ライン(軍事境界線)画定後は北朝鮮に属することになった。1990年代後半の南北の緊張緩和を背景に 2003年,両国政府の合弁事業としてケソン工業団地の建設が始まった。数年のうちに数十の韓国企業が織物,化学,電子機器などの工場を立地し,北朝鮮側に数千の雇用をもたらした。しかし,工業団地の運営は両国関係にたびたび左右された。2016年1月北朝鮮が水素爆弾の実験成功を発表すると,工業団地の収益が核開発に利用されている疑いがあるとして韓国企業は操業を全面的に停止し,韓国人労働者を引き揚げた。ケソン付近ではチョウセンニンジンの栽培が古くから行なわれ,加工方法の違いによって紅参こうじん),白参(はくじん)等の名で知られている。旧跡は朝鮮戦争でほとんど破壊されたが,高麗時代の遺構 12件が 2013年世界遺産の文化遺産に登録された。北郊チョンマ(天磨)山のふもとにパギョン(朴淵)瀑布の景勝地がある。ピョンブ(平釜)鉄道と高速道路で首都ピョンヤン(平壌)と結ばれる。人口 19万2578(2008)。

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