日本大百科全書(ニッポニカ) 「こたつ」の意味・わかりやすい解説
こたつ
こたつ / 炬燵
冬季に使用する採暖用具の一つで、熱源の上に木製の櫓(やぐら)を置き、上からふとんをかけ、下半身を中に入れて暖まる。古くは「火燵」とも書き、熱源には炭火を用いたが、近年は電気ごたつが普及している。冬はこたつが一家だんらんの場となることが多い。これには構造的に掘りごたつ、腰掛けごたつ、置きごたつの3形式がある。掘りごたつは切りごたつともいわれるもので、いろりの上に炭火を置く部分のみを開口した簀子(すのこ)をのせ、その上に櫓をのせたもの。腰掛けごたつは、熱源(炭火)を置く炉面を床下40センチメートル程度のところにつくり、床上に櫓をのせ、床面(畳)に腰掛けて利用する。半畳(はんじょう)の大きさが一般的で、こたつが不要な季節は櫓を外して蓋(ふた)をしておく。これが一般的になったのは昭和になってからで、現在、掘りごたつといえばこの腰掛けごたつをさすのがほとんどである。置きごたつは、櫓の底に板を張り、その上に土製の火容(ひいれ)を置いて使うもので、自由に移動できる。櫓は45センチメートル角程度の広さで小さく、のちには炭火のかわりに電気あんかを入れて使ったりもした。
こたつの起源は明らかではないが、室町時代にいろりに櫓をかけてこたつにしたのが始まりで、「こたつ」の語は「火榻子(かとうし)」の宋(そう)音に基づくとされている。当時の櫓は低いもので、現在の櫓の高さになったのは江戸時代からである。高い櫓のこたつは、とくに高(たか)ごたつなどといわれ、置きごたつから広まっていった。行火(あんか)は置きごたつの一種である。なお、こたつ自体は、家庭燃料の乏しい都市から普及していったものである。
[小川直之]
『宮本馨太郎著『民具入門』(1969・慶友社)』