日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルヌビア石」の意味・わかりやすい解説
コルヌビア石
こるぬびあせき
cornubite
ヒ酸塩鉱物の一つ。コーンウォール石と同質異像関係にある。両者は密接な共存関係にあるため、物理的な生成条件はほとんど同一と考えられる。両者とも擬くじゃく石pseudomalachite(化学式Cu5[(OH)2|PO4]2)群に属する。なお、擬くじゃく石は同質三像関係をもっている。自形は非常にまれ。一方向にやや扁平(へんぺい)な板状のものが集合をなす。多く繊維状あるいは球状、集落状集合、皮膜状をなす。
各種銅鉱床の酸化帯に産する。砒(ひ)四面銅鉱、硫砒銅鉱、ルソン銅鉱などが初生鉱物として考えられるものの、初生鉱物との共存例は少なく、普通は銅を主成分とした酸化物・炭酸塩・リン酸塩・ヒ酸塩・ケイ酸塩二次鉱物の複雑な組合せで構成される。成分中のヒ素は硫砒鉄鉱あるいはスコロド石に由来する可能性もある。日本では山梨県増富(ますとみ)村(現、北杜(ほくと)市須玉(すたま)町)増富鉱山(閉山)から産した。鉱物学者の櫻井欽一(さくらいきんいち)(1912―1993)は増富鉱山産の試料を肉眼で観察し「見たこともない銅の二次鉱物」と断定した。新鉱物コルヌビア石の原記載がイギリスの雑誌に掲載されたのはその直後のことである。
同定は類似物が多いので、非常に困難である。しいていえば、その緑色はいわゆる林檎(りんご)緑色を呈し、顔料になる銅の炭酸塩などよりも粉末になったときの色、すなわち条痕(じょうこん)の淡色化がはるかに明瞭(めいりょう)であることによる。また、他の銅の含水リン酸塩・ヒ酸塩鉱物より硬度がわずかに高い。原産地ではコーンウォール石より透明度が高い。命名は原産地であるイギリス、コーンウォールCornwallの中世ラテン名、コルヌビアCornubiaによる。原記載者の一人ヘイM. H. Hey(1904―1984)の談話では、アルファベット順の鉱物名の事典では、同質異像関係にあるコーンウォール石の隣に並べられるので、諸性質の比較がしやすいだろうということであった。多くの参考書でその通りになっている。
[加藤 昭 2016年9月16日]