コンフリー(読み)こんふりー(英語表記)(common) comfrey

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コンフリー」の意味・わかりやすい解説

コンフリー
こんふりー
(common) comfrey
[学] Symphytum officinale L.

ムラサキ科(APG分類:ムラサキ科)の多年草。和名ヒレハリソウ。茎は堅く直立し、中空で高さ0.3~1メートル、径1センチメートル、上部でやや分枝し、葉をやや密に互生する。茎には長さ1~2ミリメートルの白い剛毛が密に開出し、葉は披針(ひしん)形ないし卵形で、付け根は茎に流れて幅2~3ミリメートルのひれとなる。下部の葉には柄があるが、上部の葉には柄がない。5~7月に茎の先が1、2回分枝して巻き、その片側にくすんだ紅紫色あるいは黄白色の花を多数つける。花冠は萼(がく)の長さの2倍はあり、長さ1~2センチメートルの筒をなし、上部は鐘状となり、先端は浅く5裂する。ヨーロッパから小アジア、シベリア西部にかけて分布する。

 根にデンプンが多いので救荒植物とされた。アラントインアスパラギンタンニン粘液を含み、ヨーロッパでは下痢、出血、腫瘍(しゅよう)、胃潰瘍(かいよう)の治療に用いられたこともある。葉にはビタミン類、ミネラル(とくに鉄、カルシウム)が多く、民間的に栄養剤とするほか、野菜としても使われた。しかし、コンフリー原因と考えられる肝障害海外で多数報告されていたことから、日本では2004年(平成16)に食品衛生法に基づき、食用としてのコンフリーおよび含有食品の販売などが禁止された。

 ヒレハリソウは、ひれのある玻璃(はり)草(ルリソウの白花種)の意味である。単にコンフリーと称する場合、今日では本種をさしているが、元来はオオハリソウS. asperum Lepech.をさした。これはカフカスアルメニア、イラン北部原産である。

[長沢元夫 2021年7月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コンフリー」の意味・わかりやすい解説

コンフリー
Symphytum officinale; comfrey

ムラサキ科の多年草。ヨーロッパ原産で広く栽培される。ヒレハリソウの和名もあるが一般には英名でコンフリーと呼ばれる。繁殖力がきわめて旺盛で,葉などを挿して増やせる。植物全体に白色の粗毛があり,茎は分枝して多少翼がある。葉は長さ 20~40cmの大型の卵状披針形で先端はとがり,下部のものは有柄で基部は茎に流れて翼になる。夏に,茎や枝の先端に尾状に巻いた花序を出し,多数の花をつける。花冠は筒状で先端が鐘形に 5浅裂する。花色は,紫,淡紅,白などさまざまである。果実は 4分果となる。若葉は食用として,根茎や根は下痢止めや止血などに用いられた。日本には明治期に観賞用として入ったが,その強壮剤としての薬効が宣伝されて一時,栽培が普及した。しかし海外においてコンフリーの摂取による健康被害の例が多く報告されたことをうけ,厚生労働省は 2004年,食品衛生法に基づきコンフリーおよびコンフリーを含む食品の販売などを禁止した。

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