日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーク石」の意味・わかりやすい解説
コーク石
こーくせき
corkite
鉛(Pb)と三価の鉄(Fe3+)の含水硫酸塩リン酸塩鉱物。この種の複陰イオン鉱物は原子配列は明礬(みょうばん)石構造であるが、リン酸塩・ヒ酸塩・バナジン酸塩鉱物に分類され、ビューダン石系鉱物に入れられる。本鉱はその[PO4](リン酸)置換体にあたる。各種鉛・亜鉛・銅鉱床の酸化帯に産する。鉛や鉄や硫酸基は硫化物に由来するとして解釈できるが、リン酸基の初生鉱物はかならずしも明らかでない。ただし緑鉛鉱と密接共存する場合はこれより晩期の生成なので、緑鉛鉱のようなリン酸塩がリン酸の根源となっている可能性はある。日本では秋田県鹿角(かづの)市尾去沢(おさりざわ)鉱山(閉山)で、他の鉛の二次鉱物と共存して産した。
共存鉱物は緑鉛鉱、鉛鉄明礬石plumbojarosite(化学式PbFe3+6[(OH)3|SO4]4)、硫酸鉛鉱、針鉄鉱、石英など。ビューダン石系鉱物の構成員とは肉眼的に区別しがたい。ただ、緑鉛鉱に伴われて比重の大きそうな褐色粉末状物質があれば、本鉱の可能性はある。しかし本鉱と同系のキントア石kintoreiteは[SO4](硫酸基)に乏しく、PbFe3+3[(OH,H2O)3|PO4]2の式が与えられ、1995年にオーストラリア、ブロークン・ヒルBroken Hill鉱山から新鉱物として記載されるまでは、他のビューダン石系鉱物と誤認されていた。命名は最初に確認された産地グランドアGlandore鉄鉱山を含むアイルランドのコークCork地方にちなむ。
[加藤 昭 2016年9月16日]