改訂新版 世界大百科事典 「コーホート」の意味・わかりやすい解説
コーホート
cohort
ある特定期間に出生した人口,とくにある1年間に出生した人口集団を意味し,〈同時発生集団〉とも呼ばれる。第2次大戦後,とくに人口学の分野において用いられるようになった重要な概念である。期間を1年に限らず,5年間としたり,年齢5歳階級別人口の一つの級に属する人口を,一つのコーホートと考えたり(年齢コーホート),また出生集団に限らず,特定期間に結婚した夫婦集団を結婚コーホートと考えることもある。コーホートは,今まで一般に使用されてきた世代generationにあたるものであるが,世代概念は社会学の広い意義をもっているため,人口学上の特有のものとして区別するためにコーホートの概念が使用されるに至った。ある年次に生まれた出生女児集団が一生涯にどのくらいの子どもを産んだか,またある年次の出生の人口がどのような死亡率で死亡していったかを計算する場合,これを〈実際コーホートactual cohort〉の出生力とか死亡率(あるいは生残率)と呼ばれる。しかし,ある年次の年齢別の女子人口の特殊出生率(多数のコーホートの出生率)をもって,生涯を経過している間にどのくらいの出生児を産むことになるかを考えた場合,これらのコーホートを〈仮設コーホートhypothetical cohort〉という。生命表もこの概念を利用したものである。コーホートの語源は,古代ローマの軍編成の単位集団を表す言葉で,1コーホートの人員は500~600人とされ10コーホートをもって1リージョンlegionとされた。
執筆者:黒田 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報