日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴジラ」の意味・わかりやすい解説
ゴジラ
ごじら
日本映画。1954年(昭和29)作品。当時の日本としては画期的といえる特殊撮影を駆使したSF怪獣映画。海棲爬虫(かいせいはちゅう)類から陸上獣類に進化する過程の生物という設定で、海底の洞窟(どうくつ)に潜んでいたゴジラが、水爆実験のために太古からの眠りを覚まされ、口から高熱放射線を吐きながら東京湾から上陸、都心を荒れ狂ったあげく海中へ去るが、やがて芹沢(せりざわ)博士が発明した化合物、オキシジェン・デストロイヤー(水中酸素破壊剤)によって滅ぼされる。製作・田中友幸、監督・本多猪四郎(いしろう)。香山滋(かやましげる)の原作よりも、水爆実験という社会的背景を強調したこともあって、描写は深刻で重苦しく、破壊されるミニアチュアが重量感に欠けること、縫いぐるみ方式ゆえの怪獣の体形や操作上の難点などを指摘する批評が目だったが、その後、この作品をいわば幼児体験として成長した世代から圧倒的な支持を受けることになる。興行面ではヒットし、東宝の怪獣ものを主としたSF路線を生むきっかけとなり、それらの特撮監督を担当した円谷英二(つぶらやえいじ)は特殊技術界のスター的存在となった。それはやがて、テレビ・シリーズ『ウルトラQ』(円谷プロ)へと引き継がれた。東宝の怪獣シリーズは『メカゴジラの逆襲』(1975)でひとまず終わるが、84年の新『ゴジラ』から再スタート。98年の夏にはアメリカ製の『GODZILLA』が東宝系で封切られた。
[森 卓也]