中生代を三分したうちの真ん中の地質時代で、三畳紀と白亜紀との間の約2億0130万年前から約1億4500万年前までの約5630万年の期間に相当する。ジュラ紀に形成された地層をジュラ系という。ジュラ紀の名称は、フランスとスイスの国境をなすジュラ山脈にちなみ、1829年にフランスの古生物学者ブロンニャールAdolphe-Théodore Brongniart(1801―1876)が地質時代を表す名として使ったのに始まる。イギリスでは地質学者スミスがこの時代の地層を調査し、地層累重の法則や化石による地層同定など層序学の重要な基礎的概念を確立した。さらに19世紀中期にはフランスの古生物学者ドービニーやドイツの地質・古生物学者オッペルによって、より細かい時代区分の単位となる階や、特定の化石種(おもにアンモナイト)によって特徴づけられる化石帯の概念が生まれ、以後の層序学の規範となった。
ジュラ紀層はその後世界各地で分布が知られ層序が明らかにされたが、地層の完全さと保存のよい化石の豊富なことでは北西ヨーロッパに匹敵する地域はない。一般にジュラ紀は、前期(ヘッタンギアン、シネムーリアン、プリンスバッキアン、トアルシアン)、中期(アーレニアン、バッジョシアン、バトニアン、カロビアン)、後期(オックスフォーディアン、キンメリッジアン、チトニアン)の3期11階に区分され、西ヨーロッパではそのなかに全部で約65に及ぶアンモナイト化石帯が認められている。ほかの地質時代でもこれ以上細かな時代区分は求めがたいので、化石による時間の分解能は100万年程度が限界であることになる。
三畳紀との境界は、かなり顕著な海生動物群の変革と世界的な海退によって明確に示される。セラタイト類にかわって狭義のアンモナイト類が大発展を遂げたほか、ベレムナイト(矢石、箭石(やいし))類、三角貝類、イノセラムス類などが繁栄し、白亜紀の子孫に引き継がれていった。アンモナイト以外では海成層の示準化石(標準化石)として放散虫が重視されている。後期になると、テチス区と北極区との対立が明確となり、分帯に用いられる示準化石も異なっている。陸上では爬虫類(はちゅうるい)が大発展し、巨大な肉食・草食の恐竜や翼竜が現れ、ワニ類や始祖鳥も出現した。ドイツ南部ホルツマーデンの黒色頁岩には魚竜やウミユリをはじめとする多様な海生動物が、またゾルンホーフェンの石版石石灰岩には始祖鳥や翼竜をはじめ、通常は化石に保存されにくいさまざまな動物がみごとな保存状態で産出し、貴重な知見を与えてくれる。
ジュラ紀の海進は三畳紀のものよりも規模が大きく、準安定地域や一部の安定大陸の上にも浅海堆積(たいせき)物が分布している。大洋底のジュラ紀堆積物はほとんどがすでに海溝の部分に沈み込んでいるか陸地に付加されていて、海洋では西太平洋と大西洋の限られた海域にのみ存在する。
日本のジュラ紀層は、すでに大陸の一部を形成していたさまざまな古期岩類の上にたまった陸棚性堆積物と、太平洋からプレート運動によって水平に運ばれ大陸棚に付加された遠洋性堆積物が明らかに区別される。前者はアンモナイトなどの大形化石の産出によって、古くから北上(きたかみ)山地、北陸、中国地方西部、西南日本外帯などの狭い地帯などに知られているもので、分布は局地的であるが、一般に厚い砕屑(さいせつ)岩からなる。後者は、日本列島の中軸部に広く分布し、以前は「秩父古生層」とよばれていた泥質岩であるが、プレートテクトニクスの発展と放散虫の研究によってその大部分はジュラ紀の海洋底堆積物からなる付加体であることが明らかにされた。これに伴って日本列島に関するジュラ紀の古地理と地史に対する考え方は大きく変化した。
[速水 格・小澤智生 2015年8月19日]
『市川浩一郎他著『改訂新版地史学 下巻』(1967・朝倉書店)』▽『木村敏雄・速水格・吉田鎮男著『日本の地質』(1993・東京大学出版会)』▽『ドゥーガル・ディクソン著、小畠郁生監訳『生命と地球の進化アトラスⅡ デボン紀から白亜紀』(2003・朝倉書店)』
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中生代を三つに分けたうちの第2の時代で,いまから約2億1300万年前に始まり,1億4400万年前に終わる約6900万年間の地質時代をいう。この時代に形成された地層すなわちジュラ系Jurassic systemの名はフランス,スイス国境にあるジュラ山脈にちなんで名づけられた。西ヨーロッパのジュラ系は保存のよい化石を豊富に含み,地層累重の法則と化石による地層の同定・対比の概念を確立したW.スミス以来詳しく研究され,約65のアンモナイトによる化石帯が設定され,国際的な対比の基準となっている。多くの特徴ある絶滅生物が栄華をきわめた時代でもある。気候は一般に温暖で,地域による気温較差が現在ほど大きくなかったと考えられている。示準化石としてはアンモナイトのほかベレムナイト,特定のグループの二枚貝が利用され,最近では放散虫も重視される。日本のジュラ系は多くの堆積区に分かれて分布し,層相の変化が激しい。大陸側では山間盆地に厚い内湾性~汽水性の堆積物を生じて,植物やシジミ類の化石を多産し,海進時には北極区とテチス区の要素が混在したアンモナイトケツ岩がみられる。これに対し太平洋側では礁性の石灰岩(鳥巣動物群)を含む比較的薄い外海性の堆積物が卓越する。火成活動はほとんど知られていない。
→地質時代
執筆者:速水 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…山脈の最高点はクレ・ド・ラ・ネージュ(1723m)で,ついでルキュレ(1720m),グラン・クレ・ドー(またはクルドス,1624m)などで,いずれもジュネーブ西方にあり,山脈の東縁が高い。この山脈を模式地として地質年代区分のひとつ(ジュラ紀)が設定されたように,山脈はおもに中生代ジュラ紀の石灰岩質の地層からなり,中生代末期から新生代にかけてのアルプス造山運動にともない南東方向から圧縮をうけて褶曲構造が発達した。地質構造の軸は山脈の延長方向(北東~南西)に延び,山稜や谷は地質構造に支配されて背斜山稜や向斜谷をつくる。…
…中植代Mesophytic eraは裸子植物が全盛をきわめた時代で,その期間は二畳紀中葉から白亜紀中葉までとされている。 中生代はさらに古いほうから三畳紀,ジュラ紀,白亜紀の三つの地質時代に区分される。三畳紀とジュラ紀の間にはかなり急激な海生動物の入れかわりがあった。…
※「ジュラ紀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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