日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴヨウマツ」の意味・わかりやすい解説
ゴヨウマツ
ごようまつ / 五葉松
[学] Pinus parviflora Sieb. et Zucc.
マツ科(分子系統に基づく分類:マツ科)の常緑針葉高木。別名ヒメコマツ。大きいものは高さ35メートル、直径1.5メートルに達する。樹皮は黒灰色で、不ぞろいの針形小鱗片(りんぺん)となってはげ落ちる。葉は長さ3~9センチメートルで5本ずつが束になり短枝の上につき、三稜(さんりょう)形で上面には2本の白色の気孔線があり、縁(へり)にはまばらに細い鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。4月に開花する。雄花は当年枝の下部につき、雌花は先端につく。球果は卵状長楕円(ちょうだえん)形で、長さ5~8センチメートル。種子は倒卵形でやや大形、長短いろいろの翼がつき、翌年の10月ころ成熟する。北海道、本州、四国、九州、韓国の鬱陵(うつりょう)島に広く自生する。球果の性質や種子の翼の長さ、葉の形質などにより、南方型のマルミゴヨウと北方型のキタゴヨウ(キタゴヨウマツ)に分けることがある。庭木、盆栽として賞用され、園芸品種も多い。材は建築、楽器、彫刻、建具、マッチの軸木、パルプなどに利用する。
[林 弥栄 2018年5月21日]
文化史
『万葉集』にはマツに関連する歌が70首余り詠まれているが、ゴヨウマツの名はない。10世紀の『和名抄(わみょうしょう)』に初めて五葉の名があがるが、これは中国の種類である。日本固有の植物であるゴヨウマツは、『枕草子(まくらのそうし)』でカエデ、カツラに次いで、花の咲かない木として「五葉」の名で載るのに始まる。『徒然草(つれづれぐさ)』でも「家にありたきは松、桜、松は五葉もよし」と書かれ、その後、盆栽の発達とともに栽培が盛んになった。江戸時代には十数の園芸品種が作出された。
[湯浅浩史 2018年5月21日]