日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイチョウ」の意味・わかりやすい解説
サイチョウ
さいちょう / 犀鳥
hornbill
広義には鳥綱ブッポウソウ目サイチョウ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Bucerotidaeには12属44種があり、サハラ砂漠以南のアフリカ、アジア南部、ニューギニア島などに分布している。全長約40~150センチメートル。嘴(くちばし)は大きく、上嘴の基部に大きな突起があり、これが哺乳(ほにゅう)類のサイの角(つの)を連想させるのが名の由来であるが、この突起の構造は海綿状で軽い。ジサイチョウ類を除いた多くのものは、熱帯林の高い樹上で生活し、大きな羽音をたてて強い羽ばたきで高く飛ぶ。ジサイチョウ類は主として地上生活をする。サイチョウ科の鳥は雑食性で、果実、昆虫、ネズミ、トカゲなどを食べる。雌は樹洞をみつけて、白い数個の卵を産み、抱卵を始めると嘴を突き出せる小孔を残して土や木くずを唾液(だえき)で固めて穴の入口をふさぎ、1か月ぐらいの抱卵期間を含めて、雛(ひな)がなかば成長するまで2~4か月にわたり中に閉じこもる。餌(えさ)は雄が運ぶ。この間に雌は安全に換羽を済ませると、樹洞を破って外に出るが、その後ふたたび樹洞をふさぎ、外から雌雄で雛を育てる。ジサイチョウ類には穴をふさぐ習性はない。
種としてのサイチョウBuceros rhinocerosはマレー半島、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島の森林にすみ、全長が1.1メートルある大形種で、体は黒く腹部が白い。尾も白いが、中央に太い黒帯がある。嘴は大きくて、黄白色と赤色をしており、上嘴の基部に上にとがった大きな突起がある。果実を主食とするが、トカゲ、ネズミ、小鳥やその卵などもとる。
サイチョウ科にはこのほかに、南アジアにすむアカハシサイチョウや最大種オオサイチョウ、フィリピンにすむアカエリサイチョウ、アフリカのナキサイチョウ類、アフリカとインドにいるコサイチョウ類、前述のように地上生活をするジサイチョウ類などがある。
[高野伸二]