サイバーポリス(読み)さいばーぽりす(その他表記)cyber police

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイバーポリス」の意味・わかりやすい解説

サイバーポリス
さいばーぽりす
cyber police

警察のサイバー犯罪対策や捜査組織の総称。警察内でIT(情報技術)関連の知識をもつ専門職員をさす場合もある。コンピュータやインターネットが形成する情報仮想空間を意味するサイバー(cyber)と、警察(police)を組み合わせた造語で、電脳警察ともよばれる。日本では、警察庁に犯罪対策を一元的に担うサイバー警察局があるほか、政府やインフラ施設をねらった重大事件を捜査するサイバー特別捜査隊がある。サイバー犯罪の形態は、コンピュータへの侵入による不正送金や情報流出から、プログラム破壊、ランサムウェアによる身代金要求、インターネット上へのわいせつ画像・売春薬物などの違法情報や自殺強盗誘引、銃砲製造などの有害情報の掲示、あるいは海外の国家を背景にもつ集団によるサイバー攻撃など、多様化・深刻化している。このためサイバー犯罪に特化した捜査体制を整え、最新IT機器をそろえ、最先端知識をもつ専門家を民間企業や大学などから採用。海外の捜査機関と24時間協力できる体制を整え、手口解明、情報通信記録の解析、防止・啓発活動、ITやAI(人工知能)などの先端技術の活用を図っている。

 1998年5月のバーミンガムサミット主要国首脳会議)がハイテク犯罪防止の国際協力で合意したことを受け、警察庁は1998年(平成10)、初のサイバーポリス構想「ハイテク犯罪対策重点推進プログラム」を打ち出した。警察の担当部署は、警察庁内の生活安全局、警備局、情報通信局などに分かれていたが、2022年(令和4)、司令塔として警察庁サイバー警察局を設置。捜査は原則警視庁道府県警察本部の専門部署があたるが、政府機関への攻撃や海外グループの関与など、重大事件については警察庁関東管区警察局内に設けたサイバー特別捜査隊が全国を対象に捜査する体制を整えた。サイバー犯罪を取り締まるため、不正アクセス禁止法(正称「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」平成11年法律第128号)、出会い系サイト規制法(正称「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」平成15年法律第83号)、リベンジポルノ防止法(正称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」平成26年法律第126号)などの法整備も進んだ。ただ、捜査や研究が急速な技術進展に追いついていないのが実態で、本人が気づかないうちにパソコンを遠隔操作された人が伊勢神宮(いせじんぐう)に爆破予告したとして誤認逮捕される事件(2012)などが起きている。

[矢野 武 2023年5月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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