インターネットを使った多様な犯罪の総称。サイバー犯罪ともよばれる。(1)他人の個人情報やパスワードを入手して現金を窃取するなどの不正アクセス禁止法違反、(2)コンピュータ・ウイルスなどによるサイト攻撃や身代金要求などのコンピュータ・電磁的記録対象犯罪、(3)わいせつ・薬物関連などの違法情報、自殺・強盗誘引や拳銃・爆発物等の作成などの有害情報、誹謗(ひぼう)中傷や風評、知的所有権を侵害する情報などを掲示するネットワーク利用犯罪、の大きく三つに分類される。ネット犯罪は時間的・地理的制約がなく、不特定多数が被害を受け、匿名性が高く、物理的痕跡が残らないなどの特徴がある。政府はネット犯罪を取り締まるため、電子計算機損壊等業務妨害罪(1987)やウイルス作成罪(2011)の新設など、刑法をたびたび改正し、不正アクセス禁止法(1999)、プロバイダー責任法(2001)、リベンジポルノ防止法(2014)の制定など、法整備に取り組んでいる。捜査面では、2022年(令和4)に取締りの司令塔となる警察庁サイバー警察局と、国境を超えた捜査をするサイバー特別捜査隊を設けた。しかしネットサービスの進化・多様化に伴い、犯罪内容は年々巧妙・凶悪化し、海外の国家を背景にした犯罪も増え、防犯や被害者救済は後手に回っている。
警察庁によると、2022年のネット犯罪の検挙件数は1万2369件と過去最多だった。ネットバンキングによる不正送金や、ウイルス感染したシステムの復旧と引き換えに身代金を要求するランサムウェア被害の増加が目だつほか、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上の闇バイトを通じた広域強盗事件も発生。北朝鮮やロシア関連グループによるサイバー攻撃も増え、警察庁が検知した不審アクセス件数(探知行為とみられる件数)は1日・1IPアドレス当り7707.9件と過去最多だった。
[矢野 武 2023年7月19日]
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