サムエル(読み)さむえる(英語表記)šemū'ēl ヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サムエル」の意味・わかりやすい解説

サムエル
さむえる
šemū'ēl ヘブライ語
Samuel 英語

古代イスラエルの士師(神の霊力を受けた指導者)、祭司預言者、神の人。エフライム出身。イスラエルの王国成立に重要な役割を果たしたと考えられるが、複数の伝承が混在し、一義的に人物像を抽出することはできない。サムエル自身は王制に反対したが、ペリシテの圧迫に苦しむ民の意思に従ったともいわれる。神のお告げを知らせる預言者として、サムエルはサウルをイスラエルの君(ナギード)と認め、彼に油を注ぐ儀式を行い、王とした。しかし、サウルが神のことばに背いたために、サムエルは、新たにダビデを選んで油を注いだ(「サムエル記」上・1~16、19、28章)。

市川 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サムエル」の意味・わかりやすい解説

サムエル
Samuel

前 11世紀末頃在世のイスラエルの預言者。モーセからダビデにいたるイスラエルの歴史で最も傑出した人物の一人。『サムエル記』では先見者,ナジル人,最後の士師として描かれている。サムエルの物語には修正や誇張が多く,正確な人物像は把握しがたい。サムエルは母ハンナの熱心な祈りにより生れ (父はエルカナ) ,シロの聖所で育ったが,少年の頃神が彼に現れ,シロの祭司エリの家の没落を予告したことを契機に預言者になった (サムエル記上3・2~20) 。ナジル人としての彼は,バール神を崇拝するシンクレティズムからヤハウェ信仰を守ることに力を尽したが,彼の最大の功績はサウルとダビデを導き,イスラエルの王政を確立したことである。

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