サトザクラ(読み)さとざくら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトザクラ」の意味・わかりやすい解説

サトザクラ
さとざくら / 里桜
[学] Cerasus serrulata (Lindl.) G.Don
Prunus lannesiana Wilson

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木で、ボタンザクラともいう。オオシマザクラを主として、これにヤマザクラオオヤマザクラなどが交雑したものなどから改良選出された園芸品種の総称。人里近い所に植えられるので里桜の名がある。4月中旬から下旬に、新葉と同時または開葉後に開花するものが多く、一重咲きもあるが、八重咲きのものが多い。白色、淡紅色、紅色、濃紅色のほか、淡黄緑色の花もあり、200種以上の品種がある。

小林義雄 2020年1月21日]

種類

一重の白色花を開くものにはシラユキ(白雪)、ウスズミ(薄墨)、ミナカミ(水上)、タイハク(太白)などがあり、タイハクは花径5センチメートル以上の大きな花が咲き、花弁がほとんど円形に近い。花弁がすこし増加したものには、ミクルマガエシ(御車返し)別名キリガヤ(桐が谷)があり、一重の花と6~8枚の花弁をもった花とが、同じ木に咲く。ジョウニオイ(上匂)、スルガダイニオイ(駿河台匂)、ホソカワニオイ(細川匂)などは咲き初めに香りのよい白色花を開くが、これらの花は5~6枚の花弁のほかに、雄しべの葯(やく)が花弁状に変わった旗弁を交えている。アリアケ(有明)、オオヂョウチン(大提灯)などは5~12枚の花弁がある大きな花が咲く。花弁が15~20枚あるものには淡紅色の美しい花を開くホウリンジ(法輪寺)、アズマニシキ(東錦)、フクロクジュ(福禄寿)、エド(江戸)や、大きな白色花がやや下向きに咲くシロタエ(白妙)などがある。花弁が30枚内外ある大きな花が垂れ下がって咲くフゲンゾウ(普賢象)、イチヨウ(一葉)、カンザン(関山)、ショウゲツ(松月)は広く公園などに植栽される。これらの花には葉状に変化した雌しべが1~2個ある。さらに花弁が増加して100枚以上の菊咲きになったサクラもあり、ケンロクエンキクザクラ(兼六園菊桜)、ジュズカケザクラ(数珠掛桜)、ナジマザクラ(名島桜)などは、一つの花の中にさらにもう一つの花が重なり、二段咲きになる。花色の変わったサクラにはウコン(鬱金)とギョイコウ(御衣黄)がある。淡黄緑色の花弁が10~15枚あり、ギョイコウは花弁の中央に紅色の線が出てくる。アマノガワ(天の川)は樹形が変わっており、枝がみな上を向いて直立しており、花弁は15枚内外あり、花も上を向いて開く。また、キクシダレ(菊枝垂)のように菊咲きでしだれるものもある。

[小林義雄 2020年1月21日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サトザクラ」の意味・わかりやすい解説

サトザクラ(里桜)
サトザクラ
Prunus lannesiana

バラ科の落葉高木。庭園に栽培される観賞用のサクラで,八重咲きとなり,通常ヤエザクラと呼ばれる品種の大部分はこの種に属する。開花期が遅く,ソメイヨシノやヤマザクラに比べて半月ほど遅れるのが普通である。伊豆半島大島自生があるといわれるオオシマザクラ P. lannesiana var. speciosa変種と考えられているが,学名上はサトザクラのほうが母種となっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android