改訂新版 世界大百科事典 「オニヤンマ」の意味・わかりやすい解説
オニヤンマ
Anotogaster sieboldii
トンボ目オニヤンマ科の昆虫。日本産のトンボのうち最大の種類で,雄は体長約9cm,雌は産卵管の先まで測れば10cm以上になる。黒色に黄色の縞のある目だったトンボで,北海道から九州の端まで6~9月のころ,丘陵地や低山地などにふつうで,流れの上や道路上を往復飛翔(ひしよう)するのが見られる。雌は浅い流れにきてがんじょうな産卵管を浅い水中に突き立てて産卵し,幼虫は底の砂や泥に半ば埋もれて生活し,3~4年かかって成長する。本州・四国・九州産の個体では体斑の変異は見られないが,北海道のものは少し小型となり,琉球諸島産のものでは尾端部の黄色みが強くなり,台湾や中国南部のものでは黄色みがさらに強くなる。中国からミャンマーにかけて近似の別種がいくつか知られている。オニヤンマ科Cordulegasteridaeには,ほかにミナミヤンマ,カラスヤンマなど2属約20種が北半球から記載されている。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報