日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニヤンマ」の意味・わかりやすい解説
オニヤンマ
おにやんま / 鬼蜻蜓
馬大頭
[学] Anotogaster sieboldii
昆虫綱トンボ目オニヤンマ科に属する昆虫。日本産のトンボのうち最大種で、とくに雌は体長110ミリメートル、後翅長(こうしちょう)65ミリメートルに達し、腹端から産卵管が突き出している。体は漆黒色で黄色の横縞(よこじま)があり、複眼は成熟虫では濃緑色に光る。北海道から琉球(りゅうきゅう)列島まで分布するが、本州の低山地に多い。幼虫は剛毛を生じた頑丈な体で、細い流れの砂中に育ち、初夏のころ羽化して出る。成虫は道路や水路の上を往復して飛ぶ。雌は流れの砂中に腹端の産卵管を突き立てて産卵する。卵は楕円(だえん)形、孵化(ふか)した幼虫は成長に3~4年を要すると考えられる。オニヤンマ属は、ヒマラヤから日本まで6、7種が知られているが、再整理を要する。これらに似て雄の後翅の肛角(こうかく)が角張ったコルドレガスター属Cordulegasterは、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに若干の種を産し、ヒマラヤオニヤンマ属Neallogasterは、ヒマラヤから中国西北部にだけ数種類が分布する。コオニヤンマは別科のサナエトンボ科に含まれる種で、オニヤンマとは遠縁である。
[朝比奈正二郎]