日本大百科全書(ニッポニカ) 「サライ」の意味・わかりやすい解説
サライ
さらい
Sarai
13、14世紀のキプチャク・ハン国の首都。サライは宮殿の意。新旧の二つがある。旧サライはキプチャク・ハン国の創始者バトゥが建てたもので、その遺跡はボルガ川下流域のアストラハン市に近いセリトレンノエ村にある。しかし、有名なのはバトゥの弟ベルケが建てた新サライであって、その遺跡はボルガ川河畔で、旧サライよりも上流の一支流アフトバ川河畔のボルゴグラード市の傍らに位置する。新サライが首都となったのは第9代のウズベク・ハンのときである。サライ市は1395年にティームールの軍隊に破壊され、15、16世紀にモスクワ大公国の侵入によって廃墟(はいきょ)と化した。新サライは1843~47年に初めて発掘され、その後の発掘によって、キプチャク・ハン国時代の宮殿、モスク、手工業工場、水道装置遺跡のほか、銅鉄製品、陶磁片、ガラス器、農産物、皮革製品が大量に出土し、当時の都市生活、物質文化、商工業の姿をよく伝えている。
[佐口 透]