哺乳(ほにゅう)綱奇蹄(きてい)目ウマ科の動物。同科の1種ウマの1品種で、イギリスで人工的に作出された。原義は純血種の意。代表的な競走馬として知られ、次のような特徴をもつ。頭は小さく目は大きく、頸(くび)は緩やかな弧を描いて長く、胸は深い。鬐甲(きこう)は鮮明で、肩は傾斜し、長い肢(あし)には大きくじょうぶな関節がある。背は短く、腰は広く、尻(しり)はやや傾斜し大きい。全体の形としては、やや長方形。皮膚は薄く、強くて長い筋肉や血管の分布がはっきりみられる。歩幅が大きく、その歩様は雄大である。体高は1.6~1.65メートル、体重は450~500キログラムほどに達する。性質は鋭敏で、速力はアラブに比べてはるかに速い(2400メートルで2分22秒の記録がある)が持久力に乏しく、また粗放な管理には耐えない。
現在では大部分が競走用、一部が馬術用であるこのウマも、元来は狩猟用馬の改良を目的として、土産馬の雌に東洋馬の雄を交配したものである。すなわち、その母系は、17世紀にイギリスにいた速力と持久力に優れた在来馬のなかから選ばれた少数の牝馬(ひんば)を基礎とする。一方、父系をたどると3頭の種牡馬(しゅぼば)に到達する。それらはダーレーアラビアンDarley Arabian、バイアリータークByerley Turk、およびゴドルフィンバルブGodolphin Barbである。改良の過程で、速力と持久力に優れたウマを選抜するために、競馬が用いられた。1850年以降競走距離が2マイル(約3.2キロメートル)以下となってからは、改良の目的は速力の向上のみに移行した。1791年に『ゼネラル・スタッド・ブック』general stud book、いわゆるサラブレッド血統書が創刊されてからは、サラブレッドどうしの交配が行われているが、このほかサラブレッドは世界各国のウマの改良に多大の貢献をした。日本で本格的にサラブレッドの生産が開始されたのは、1907年(明治40)に小岩井農場がイギリスから雄1頭、雌20頭を輸入して以後である。
現在、サラブレッドは世界各国で繁殖されているが、イギリス、フランス、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、日本などに多い。日本では生産頭数の約96%を日高を中心とする北海道が占める。競走馬としてのサラブレッドは、得意とする競走距離により短距離馬(スプリンターsprinter)、中距離馬(マイラーmiler)、長距離馬(ステイヤーstayer)などに分類され、体型にもそれぞれ多少の相違がみられる。
[加納康彦]
『日本中央競馬会競走馬総合研究所編『サラブレッド!サラブレッド!?』(1997・緑書房)』▽『日本中央競馬会競走馬総合研究所編『サラブレッドの科学』(講談社・ブルーバックス)』▽『山野浩一著『サラブレッドの誕生』(朝日選書)』
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(須田鷹雄 競馬ライター / 2007年)
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