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気質 きしつtemperament

翻訳|temperament

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

気質
きしつ
temperament

感情的な傾向や反応に関係している人格 (パーソナリティ ) の一つの側面をさす心理学,精神医学用語。一般には人格の遺伝的,生物学的基盤をいい,特に生化学的変化や新陳代謝に関係している側面をさす。人格の意志的側面を性格といい,感情的側面を気質というように区別して用いられることもある。2世紀頃,ギリシアの医師ガレノスは体内に4種の体液が存在するというヒポクラテスの体液説に基づいて,気質を胆汁質憂鬱質 (ゆううつしつ) ,多血質粘液質の4種に分類した。この気質説はほとんど実証的根拠をもたないが,近代の内分泌学に基づいた気質の研究に受け継がれているといわれる。気質の類型に関する実証的研究の代表としては,エルンスト・クレッチマーのものがある。その研究の特徴は,人間の体型と精神病の種類および気質との関係に着目した点にある。それによれば,統合失調症の患者には体型として細長型が多く,躁うつ病 (循環病) 患者には肥満型が多い。一方,健常者の気質にも分裂性気質と躁うつ性気質 (循環気質) の二つの典型があるといわれ,この場合にも,前者には細長型が多く,後者には肥満型が多いといわれる。

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デジタル大辞泉の解説

かた‐ぎ【気質/形気/容気】

《「形木」から》
身分・職業・年齢層・環境などを同じくする人たちの間にみられる、特有の気風・性格。「職人―」「昔―」
習わし。慣習。
「アル程ノ宝ヲ奉ラルル―ガゴザッタ」〈天草本伊曽保・イソポが生涯〉
容姿、または、性質・気だて。
「行義(ぎゃうぎ)強い―なれば」〈浮・禁短気・三〉

き‐しつ【気質】

気だて。気性。かたぎ。「母方から流れる芸術家の気質
中国で、万物を構成する物質である気によって形成される物の性質。特に宋(そう)学では、人間がそれぞれ別にもつ身体的、精神的な性質をいう。
心理学で、個人の性格の基礎にある、遺伝的、体質的に規定されたものと考えられている感情的傾向。体液の相対的な割合の違いによって多血質・胆汁質・黒胆汁質粘液質の分類や、回帰性・分裂性・粘着性という気質分類がある。

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百科事典マイペディアの解説

気質【きしつ】

人間の心の働きのうちの生来特質と考えられるもの。英語ではtemperament。環境からの影響を受けにくいとされる点で,性格とは異なる。ヒポクラテス以来,西洋では4種の体液(血液・胆汁・黒胆汁・粘液)の混合の程度によってさまざまな気質が生じると考えられた。

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世界大百科事典 第2版の解説

きしつ【気質】

人間ひとりひとりの特有な心理的特徴は,一般に性格と呼ばれるが,この性格が環境からの影響をうけて後天的に形成されるものであるのに対し,その基礎にあって生物学的に規定されていると考えられる生来性の特質が気質である。気質を表す英語temperamentなどの西欧語は語源的に〈ほどよく混ぜ合わせる〉という意味のラテン語temperareに由来しているが,これは,ヒッポクラテス以来,人間の性格類型を血液・胆汁・黒胆汁・粘液という4種の体液の混合のぐあいから考えたためである。

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大辞林 第三版の解説

かたぎ【気質】

〔「形木」から生じた語〕
ある身分・職業・環境などの人に特有の気性。多く他の語と複合して用いる。 「昔-」 「職人-」 「江戸っ子-」
その人の感情や行動に表れる特有の傾向。気性や習慣。 「行義強い-なれば/浮世草子・禁短気」

きしつ【気質】

言動に表れる、その人の身に備わった性質。気だて。かたぎ。 「激しい-」
中国で、万物を構成する物質である気の集散運動によって形成される個体をいう語。特に、宋学では、人間の肉体および肉体に固有の心理的・生理的素質のこと。 → 気質の性
〘心〙 人の性格の基礎をなす感情的反応の特徴。遺伝的・生理的規定が強いとされる。多血質・憂鬱質・胆汁質・粘液質の四分類のほか、心理学・生理学などに基づく種々の分類がある。 〔英語 temperament の訳語として明治後期に心理学や哲学の用語として用いられる〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

気質
きしつ
temperament

個人の精神的資質には性格、知能以外に情動反応の特徴も含まれるが、この情動反応の背景にある生来の感受性、反応強度・速度、テンポ、気分素質を総称して気質とよんでいる。気質を性格の下部構造とみる立場と、性格を意志の特徴とし、気質を感情の特徴とみる立場とがある。いずれの立場をとるにしても、気質は生物学的過程と密接に関連している。
 もっともよく知られているのは、ドイツのクレッチマーが分類した内閉性気質、循環性気質、粘着性気質である。内閉性気質の特徴は、敏感と鈍感の共存性である。循環性気質の特徴は、躁(そう)性とゆううつの共存、同調性、および活発と緩慢の波動性である。粘着性気質の特徴は、環境に対する柔軟性の欠如、および粘着性と爆発性の共存である。この3気質は体型と親和性があり、内閉性気質はやせ型(細長型)、循環性気質は太り型(肥満型)、粘着性気質は筋骨型(闘士型)と対応している。[山崎勝男]

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世界大百科事典内の気質の言及

【人格】より

…心理学において両者を同義に用いる場合もあるが,区別して用いる場合には,人格(パーソナリティ)が知・情・意の全体的な統一性をあらわすのに対して,性格(キャラクター)は,そのうちの情意的な側面をさすのが普通である。 また,性格に似た語として気質temperamentがあるが,それは一般に性格の下部構造をなし,個人の情動的反応の特質を規定する遺伝的・生物学的な特性(神経系のタイプなど)をさしている。古代ギリシア以来,有名な〈多血質〉〈胆汁質〉〈黒胆汁質〉〈粘液質〉という気質の4類型があるが,そこには体液の混合の割合がその人の気質を決定するというヒッポクラテスに始まる古代ギリシア医学の考え方があった。…

【性格】より

…その始まりはひじょうに古く,古代ギリシアにさかのぼり,伝統の一方は16世紀のフランスのモラリストたちに継承され,モンテーニュ,パスカル,ラ・ブリュイエールなどの随想録,箴言集などには深い理解と洞察が見られ,文学作品の中にも興味深く描かれている。他方,科学的にはやはりギリシアで2世紀にガレノスが体液を4種類(血液,胆汁,黒胆汁,粘液)に分け,それに従って4気質(多血質,胆汁質,憂鬱(ゆううつ)質,粘液質)の分類を行っている。その後生理学の進歩とともに体液と気質との関連づけは否定されるようになったが,気質の4類型は長く用いられた。…

【素質】より

…個人が先天的に持っている機能の身体的ないし精神的反応傾向のこと。このうち身体的反応傾向を体質と呼び,精神的反応傾向を気質と呼ぶ。一般的に素質は環境の対立概念として用いられてきた。…

※「気質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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