日本大百科全書(ニッポニカ) 「サリカ法典」の意味・わかりやすい解説
サリカ法典
さりかほうてん
Lex Salica ラテン語
フランク人の一分派サリ支族の法典で、ゲルマン部族法典中もっとも重要なものである。部族法典とは、ゲルマン系諸部族が口頭で伝承してきた慣習法が、ある時点で成文化されたものと考えられるが、原法典は残存しておらず、後代の写本が残っているだけで、しかも各写本の間にはかなり大きな異同があり、当然最初の成文化以後にも、新しい追加、補足があったと考えられる。
サリカ法典も、現在の写本は約80種、普通これを5群に分類するが、65章からなる古い形と、70章ないし99章からなる新しい形とに大別され、古い形は本文のラテン語の名詞に相当するフランク語を注記した「マルベルク注解」を含むのが特徴である。原法典の成立年次に関しても諸説があるが、クロービス治世の末年、6世紀初頭とみなす見解が有力である。法典の内容は刑法的規定が大部分であり、最近の研究者は、部族法典、とりわけサリカ法典は、各種の犯罪行為に対する罰金のカタログであると特徴づけている。
[平城照介]
『久保正幡訳『サリカ法典』(1949・弘文堂)』