サレルノ(その他表記)Salerno

デジタル大辞泉 「サレルノ」の意味・読み・例文・類語

サレルノ(Salerno)

イタリア南部、カンパニア州都市サレルノ湾北部、アマルフィ海岸東端に位置する。紀元前2世紀に古代ローマ人が築いた町(ラテン語名はサレルヌム)に起源する。9世紀に、自治権をもつサレルノ公国の首都が置かれ、11世紀にノルマン人支配下に入り、13世紀頃まで南イタリアの政治的、経済的な中心地として栄えた。9世紀にはヨーロッパ最古とされる医学校が設立されたことで知られる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「サレルノ」の意味・わかりやすい解説

サレルノ
Salerno

イタリア南部,カンパニア州の都市。同名県の県都。人口13万4820(2005)。農産物,商業,工業(食品,繊維,機械,陶器)の中心地。世界的な保養地アマルフィ海岸,ソレント半島周遊の基地である。エトルリア起源といわれ,ローマ時代サレルヌムSalernumと呼ばれて,近郊のパエストゥム没落によって政治・経済上重要性を増す。ビザンティンの支配ののち,7世紀中ごろランゴバルド族のベネベント公国領となるが,839年同公国の分割にともなってサレルノ公国の首都となる。11世紀半ばノルマンに征服され,ノルマン王朝の下で11世紀末には〈医学校〉(サレルノ大学)の名声と,南部におけるギリシア,ラテン文化の伝統を維持する〈ギリシアの都〉として知られる。1130年パレルモがシチリア王国の首都になったのちも,王国の半島部の主要都市として繁栄。その後ホーエンシュタウフェン朝期にはナポリに中心が移行したため,サレルノの重要性は減じた。1647年のスペインに対するナポリの反乱はサレルノにも影響を及ぼし,イタリア統一期には活発な闘争の中心地となった。1860年イタリア王国に統合。第2次大戦中の1943年9月,連合国軍はサレルノ南部に上陸し,イタリア解放の端緒となる。44年2~7月,イタリア王国政府の臨時本部があった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サレルノ」の意味・わかりやすい解説

サレルノ
されるの
Salerno

イタリア南部、カンパニア州サレルノ県の県都。人口14万4078(2001国勢調査速報値)。サレルノ湾の北部、イルノ川の河口付近に位置する。紀元前197年、ローマ人によって建設され、ラテン名はサレルヌムSalernum。その後ビザンティンの支配を経て、646年ランゴバルドのベネベント公領となり、とくにアレキ2世ArechiⅡの治世下(757~787)に町としての発展の基礎が築かれた。839年以降はサレルノ公領の首都となり、とりわけグァイマリオ5世GuaimarioⅤ(1027~1052)下の全盛期には、南イタリア一帯に大きな政治的、経済的影響を与えた。

 1077年にはノルマンの支配下に入るが、サレルノの重要性は維持された。そのうえ、すでに9世紀初めには存在したといわれるサレルノ医学校を拠点として医学研究が行われ、12、13世紀には、全ヨーロッパ的な名声を博した。現在は商工業都市として栄え、綿業、食品工業(パスタや缶詰の製造)、機械工業が盛んである。ノルマンのロベルト・グイスカルドによって建造された大聖堂(11世紀)がある。近郊にはアマルフィ海岸や古代都市パエストゥムPaestumの遺跡などがあり、観光業も発達している。

[堺 憲一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サレルノ」の意味・わかりやすい解説

サレルノ
Salerno

イタリア南部,カンパーニア州サレルノ県の県都。チレニア海サレルノ湾奥の海港都市。前 197年ローマの植民地となった。 646年ベネベント公国に併合されたが,839~1076年は独立の侯国。 76年ノルマンのロベール・ギスカールに征服されて以後は,シチリア王国あるいはナポリ王国の一部として運命をともにした。この間 10~13世紀に医学を中心とするサレルノ医学校の学問が隆盛をみた。第2次世界大戦中の 1943年9月9日イタリア半島におけるイギリス=アメリカ連合軍の上陸地点となり,ドイツ軍との間に激戦がかわされた。 44年2~6月連合国軍占領下でイタリア王国政府 (バドリオ首相) の所在地となった。オリーブ油,ワイン,果実の輸出港。食品,建設資材,繊維製品,機械,陶磁器などの工業が主要産業。ノルマン様式の大聖堂 (9世紀) がある。 80年 11月 23日地震により大きな被害を受けた。人口 13万9019(2011推計)。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「サレルノ」の意味・わかりやすい解説

サレルノ

イタリア南部,カンパニア州ナポリの南東約50kmの都市。サレルノ湾に臨む港湾都市で,周辺の農業地帯の商工業中心地となっている。繊維・食品・機械などの工業が行われる。エトルリア起源の町でローマの植民都市となった。1076年ノルマン人に占領され,繁栄期を迎えた。サレルノ大学の所在地。1943年連合国軍が上陸し,イタリア解放の端緒となった。13万2608人(2011)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「サレルノ」の解説

サレルノ
Salerno

ナポリの南部に位置する港湾都市。起源はギリシア人の植民にあるが,前2世紀初頭にローマの植民市となる。ローマ帝国崩壊後ランゴバルドに征服され,839年には独立侯国を形成。その後,1077年に両シチリア王国に従属し,文化,学術の中心として発展した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android