さわり

精選版 日本国語大辞典 「さわり」の意味・読み・例文・類語

さわり

〘副〙 (「と」を伴って用いることもある) 軽やかでさわやかなさまを表わす語。
※玉塵抄(1563)三四日新は心のよごれきたないこと身のあかの如なぞそれを洗いすてて心を新うさわりときれいにせよの心ぞ」

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改訂新版 世界大百科事典 「さわり」の意味・わかりやすい解説

さわり

(1)義太夫節用語。義太夫節の曲の構成部分。もともとの意味は〈他流の節(ふし)に触(さわ)る〉ということで,義太夫節以外の曲節を採り入れた部分をいう。たとえば〈半太夫さわり〉など。しかし,〈さわり〉の部分はこの部分を目だたせるためであったので,それが転じて旋律の美しい部分を指すようになり,本来クドキと呼ばれるところを示し,さらには曲中の聞きどころを意味するようになった。そして,義太夫節以外でも,いろいろなジャンルでその曲の味わい深い部分をあらわしている。

(2)三味線楽器装置名称とその装置から出る特殊な音色をいう。以前は〈サハリ〉と書かれた。弦が棹に〈触(さわ)って〉音が出るという意味。〈さわり〉は日本で考案された独特の装置で,弦が棹にさわって単純な振動の楽音ではなく,複雑な倍音の加わった噪音が出る。その音色が日本人の感覚に合うために好まれてきた。また,倍音の応用により,調弦が容易にできるという実用的な面もある。〈さわり〉の装置は,上駒を短くして,第1弦(一の糸)を上駒からはずし,二と三の糸だけを上駒の上にのせ,一の糸は直接棹に触れるようにしたもので,さらに棹の上部乳袋にさわりの山と谷を作って弦の振動を複雑にしている。また,さわりの山や谷を作るかわりに,棹の下から金属のネジを通し,その先端が一の糸に触れるように工夫された〈吾妻(あづま)ざわり〉は,現在,常磐津節や清元節で盛んに用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「さわり」の意味・わかりやすい解説

さわり

かつてはサハリと書いた。雅楽琵琶(びわ)以外の琵琶や三味線の発音特性。琵琶では第一柱(じゅう)が他の柱より高く、弦が振動するとこの柱に断続的に触れて、指で押さえた音高と同時に別の音高が鳴り複雑な音色が生まれる。これをサワリという。三味線でも上駒(かみごま)に支えられていない一の糸が、直接棹(さお)のサワリ山という部分に触れて一種のうなり音を生む。

 また本来、義太夫節(ぎだゆうぶし)で他流の曲節を取り入れた部分をさすが、今日では一段中の聞かせどころの俗称となり、転じて、すべての芸能の聞きどころをさすようにもなった。

[卜田隆嗣]

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百科事典マイペディア 「さわり」の意味・わかりやすい解説

さわり

日本音楽用語。(1)義太夫節などで,他種目の旋律様式を取り入れた部分。通常旋律的に美しいので,聞き所と考えられ,転じてクドキ(口説)の部分の別称にも。サハリ,サワリと書く。(2)三味線や琵琶で弦をはじくと自然に楽器の一部に触れて,高次倍音を含んだ独特な響きが発するように工夫された機巧とその音。一種の共鳴音。

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デジタル大辞泉プラス 「さわり」の解説

さわり

佐宮圭の著作。2010年、第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞して同年刊行。受賞時のタイトルは「鶴田錦史伝 大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯」。

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世界大百科事典(旧版)内のさわりの言及

【駒】より

…三味線や胡弓では棹の上端に固定させた細長い棒状のものを上駒(かみごま)といい,駒と上駒で弦が支えられている。三味線では一の糸(最低音弦)の部分だけ上駒が省かれており,〈さわり〉(余韻をともなった複雑な音色)のくふうがなされている。三味線では駒の底(台という)の広いものを台広(だいびろ)といい,義太夫や地歌の一部(柳川三味線)で使う。…

※「さわり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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