サンシュユ(読み)さんしゅゆ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンシュユ」の意味・わかりやすい解説

サンシュユ
さんしゅゆ / 山茱萸
[学] Cornus officinalis Sieb. et Zucc.

ミズキ科(APG分類:ミズキ科)の落葉小高木で、高さ4~10メートル。中国の華北、華中、西部のほか朝鮮半島に分布する。日本には江戸時代中期に導入され、早春花木として広く植栽されてきた。枝はよく茂り、小枝は暗紫褐色で対生し、樹皮は淡褐色で薄片となってはげ落ちる。葉は有柄で対生し、卵形または長卵形で、長さ4~12センチメートル、幅2~5センチメートル。全縁で先端は長くとがり、基部はくさび形である。5~7対の側脈は弧を描いて平行に走る。葉の裏面は白色伏毛(ふくもう)で覆われ、突出した葉脈のわきに黄褐色の毛がある。葉の出る前に前年の枝先に散形花序を出し、20~30個の黄色の小花を開く。球形の花序は径4~7ミリメートルで、その下部に4個の褐色の堅い包葉がある。花弁は4枚。雄しべは4本、雌しべは1本で子房は下位。核果は楕円(だえん)形で長さ1~1.5センチメートル、8~9月に赤熟し、核の中に1~2個の種子をもつ。

[長沢元夫 2021年3月22日]

薬用

完熟した果実から核を除いて乾燥したものを山茱萸(さんしゅゆ)と称し、漢方では収斂(しゅうれん)、強壮剤として、腰痛耳鳴り遺精インポテンス、糖尿病などの治療に用いる。リンゴ酸、酒石酸などを含むので味は酸っぱい。酒に浸した山茱萸酒は強壮強精作用があるという。

[長沢元夫 2021年3月22日]


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改訂新版 世界大百科事典 「サンシュユ」の意味・わかりやすい解説

サンシュユ
Cornus officinalis Sieb.et Zucc.

中国,朝鮮原産の高さ6~7mに達するミズキ科の落葉小高木。一名をハルコガネバナともいい,日本では早春の花木として庭園に植栽されている。樹皮は暗褐色で鱗状に剝離する。葉は対生で両面ともT字状の伏毛でおおわれ,上面は光沢がある。下面脈腋(みやくえき)に生ずる褐色の毛叢は多くて印象的。花は黄色で葉より先に開き,20~30個の小花が散形について,6~8mmの総苞片4個をもつ。果実は漿果(しようか),鮮紅色で生食できる。果実の核を取り去って乾燥したものを煎用し,強壮剤,収れん剤として効ありとされる。また庭木にしたり,切花用に広く栽培する。近縁種が欧州からカフカスにかけてと北アメリカのカリフォルニアにそれぞれ1種が隔離して分布する状態や細胞遺伝学的な研究から,この仲間はミズキ科の中でも最も古い群の一つだと考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンシュユ」の意味・わかりやすい解説

サンシュユ
Cornus officinalis

ミズキ科の落葉高木で,中国や朝鮮半島に分布する。日本には江戸時代に中国から薬用植物として伝えられたが,現在では花木として庭などに栽植されている。小枝は対生し,白緑色で毛はない。幹や枝の樹皮が鱗状にはげる。長さ6~10cmの楕円形で全縁の葉が対生し,葉裏は葉脈の部分が隆起し,脈腋に黄褐色の毛がある。春早く,葉の出る前に小枝の先端に散形花序をなして黄色の小花を多数つける。花には短い柄があり,長さ 5mmほどの細い花弁4枚と4本のおしべ,1本のめしべがある。果実は長さ1~2cmの楕円形の核果で赤く熟する。種子を乾燥したものを山茱萸 (さんしゅゆ) と呼び,漢方では滋養強壮,強精剤とされる。

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百科事典マイペディア 「サンシュユ」の意味・わかりやすい解説

サンシュユ

朝鮮半島,中国原産のミズキ科の落葉小高木。江戸時代薬用として渡来。葉は対生し,楕円形で先がとがり,裏には黄褐色の毛がある。3〜4月,葉の出る前に,前年枝の先に散形花序を出し,黄色の4弁花を多数つける。果実は楕円形で長さ約2cm,堅い核があり,8〜9月赤熟。核を抜き去った果実を強壮,強精などの薬用とし,樹は庭木とする。

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