日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンショウバラ」の意味・わかりやすい解説
サンショウバラ
さんしょうばら / 山椒薔薇
[学] Rosa hirtula (Regel) Nakai
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。バラ属のものとして珍しく高木性となる種類で、幹は太く、径10センチメートルにもなる。樹皮は灰白色を帯びる淡褐色で、古くなるとはげる。枝はほぼ直角に茂る。刺(とげ)は基部が広い扁平(へんぺい)で、普通は葉柄の基部に相対につく。葉は羽状複葉で長さ6~10センチメートル、小葉は9~19枚、緑色または暗緑色で裏面は淡色。6~7月、小枝の先に径5~6センチメートル、淡紅色ぼかしの5弁花を1個つけ、1~2日で落花する。雄しべは多数、葯(やく)は黄色で大きい。花柱は離生し綿毛がある。やや甘い香りがある。果実は堅く扁球形で径約2センチメートル、刺が多く、熟すと甘い香りが強い。名は、葉がサンショウによく似ることによる。材質が堅く、斧(おの)の柄(え)にするのでオノギともいう。富士箱根地方(山梨、神奈川、静岡県)に分布する。
近縁のものに、きわめて重弁で八重咲きのイザヨイバラR. roxburghii Tratt.がある。樹形がサンショウバラに比して横張りで、葉裏の葉軸に腺毛(せんもう)、刺毛(しもう)がなく、また結実しない。名は、重弁花の一方に欠けたところがあるので、十六夜(いざよい)の月に見立てたもの。野生種はなく、盆栽や盆養に適し、江戸時代から用いられている。
[鈴木省三 2020年1月21日]