ウクライナ南東部,同名州の州都。ドニエプル川沿いにあり,人口79万5422(2005)。1921年まではアレクサンドロフスクAleksandrovskと呼んだ。ザポロージエとは〈早瀬の向こう〉という意味。1550年ころビシネベツキーに率いられたコサックがドニエプル川の中州であるホルティツァに彼らの本営を建設したのが起源で,彼らはザポロージエのコサックと呼ばれた。ザポロージエ・コサックは〈チャイカ(カモメ)〉と呼ばれるカヌーでドニエプル川を下り,黒海沿岸のクリム・ハーン国,オスマン・トルコの港町を襲撃した。ザポロージエ・コサックは16~18世紀のポーランド・リトアニア,ウクライナ,モスクワの歴史の中で重要な役割を果たしたが,1775年にはロシア皇帝エカチェリナ2世によって軍事的に征服され,本営は破壊された。現在の市の前身アレクサンドロフスクは1770年に軍事要塞として建設され(ロシア軍の司令官アレクサンドル・ゴリツィンの名から命名された),1806年にアレクサンドロフスク郡の主都となった。1870年代にクリミア半島とロシア中央部を結ぶ鉄道が市を通って開通し,工業の発展が始まり,さらに20世紀初頭にドンバスとクリボイ・ログを結ぶ鉄道が通り,1905年には労働者のみで5000人を数えた。十月革命後も市の北方にドニエプル水力発電所が建設されるなど発展を続け,1933年には人口12万を数えたが,第2次世界大戦で徹底的に破壊された。戦後再建され,ドニエプル重工業地帯の中心として発展し,機械,鉄鋼,電気,自動車,化学工業などが盛んである。工業都市でありながら緑の多い美しい町として知られている。市内のホルティツァ島にはコサック時代の土の堡塁が保存されている。市内にはこの一帯がかつてカシの林であったことを物語る樹齢600年以上のカシの大木が残っている。
執筆者:中井 和夫
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