改訂新版 世界大百科事典 「ザロモン」の意味・わかりやすい解説
ザロモン
Erich Salomon
生没年:1886-1944
ベルリン生れの写真家。1920年代を通じて写真の大量印刷が世界的規模で一般化するが,とくにドイツでは《ベルリーナー・イラストリールテ・ツァイトゥング》をはじめ写真グラフ雑誌が隆盛で,フォトジャーナリズム(グラフ・ジャーナリズム)が社会的に重要な大衆メディアとして確立していた。ザロモンは,小型カメラを隠し持ち,当時,撮影が禁止されていた重要な国際会議場や法廷に現れ,数々の写真をものにしてジャーナリズムをにぎわした。彼の写真は,〈キャンディッド・フォト(率直な写真)〉と呼ばれるように,どんな著名な政治家も気取りや厚顔をすてた素顔が写しとめられている。それは性格描写のポートレートとは対照的に,日常の中で生きている人間の姿をありのままにとらえたものであった。ザロモンはユダヤ人であったため,ヒトラー政権下のドイツを追われ最期はアウシュビッツのガス室で死ぬのだが,フォトジャーナリズムの最初のスターとして,また父として重要な写真家である。死後に出版された写真集《時代の肖像》(1963)ほかがある。
執筆者:金子 隆一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報