改訂新版 世界大百科事典 「シェーン」の意味・わかりやすい解説
シェーン
Shane
1953年製作のアメリカ映画。ジョージ・スティーブンズ監督。アラン・ラッド主演,ジーン・アーサー,バン・ヘフリン,ジャック・パランス共演。ビクター・ヤング作曲の抒情的な主題曲(《遥かなる山の呼び声》の題で大ヒットした)と〈シェーン,カム・バック!〉というラストシーンの少年の切なる叫びに象徴される甘美な感傷性によって世界的に大ヒットした西部劇の名作。パラマウントが社の創立者であるアドルフ・ズーカー会長の80歳の誕生日を記念して製作した作品で,ホームドラマと恋愛映画の要素を西部劇に導入したといわれる(開拓農民の一家の少年の視点から描かれた西部の伝説,流れ者の心に秘めた人妻への思慕)。ほぼ同時期にハリウッドでは,人種差別をテーマにしたデルマー・デービス監督《折れた矢》(1950),大衆の政治的不参加をテーマにしたフレッド・ジンネマン監督《真昼の決闘(ハイ・ヌーン)》(1952),フロイト的な精神分析のテーマをもちこんだニコラス・レイ監督《大砂塵》(1954)やラッセル・ラウズ監督《必殺の一弾》(1956),シェークスピアの《リア王》を西部の悲劇に翻案したアンソニー・マン監督《西部の人》(1958)等々,単純で粗野な善玉対悪玉の決闘を描く従来の西部劇の枠組を超える西部劇が次々と作られた。《シェーン》はメロドラマ性が強いとはいえ,西部劇以外の要素(とくに主人公の心理的葛藤(かつとう))を盛り込んだ1950年代のこれらの〈心理的西部劇〉の代表作の一つである。
→西部劇
執筆者:岡田 英美子+広岡 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報